地衣類とは、菌類の仲間で、必ず藻類と共生しているという特徴をもっています。菌類は、藻類と共生すると"地衣体" と呼ばれる特殊なからだを作ります。そして、地衣類を構成している菌と藻は、互いに助け合って生活しています。菌類は藻類に安定した住み家と生活に必要な水分を与えるかわりに、
藻類が光合成で作った栄養(炭水化物)を利用して生活します。両者の共生関係は非常に密接で、地衣体の形態、生理機能、繁殖のしかたなどは単独の生物と同じように遺伝します。つまり、あたかも独立した生物のように見えるというわけです。
地衣類は世界中に広く分布し、世界で約2万種、日本では約1800種が知られています。私たちの身近にも普通に生育していますが、大気汚染や環境の変化には抵抗力が弱い種類が多いために、都市部ではあまり多くの種類は見られません。しかし、
都市部から離れた里山や高山では、地表や岩の上、木の幹を美しく被っている地衣類を見ることができます。また、砂漠のような厳しい環境でも地衣類はわずかな水分を利用して繁茂することがあります(図1)。
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●図1 砂漠の地衣類
ソノラ砂漠(メキシコ) |
■地衣類とまちがえやすい生きもの
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地衣類 |
コケ類 |
菌類 |
からだの細胞 |
菌と藻の細胞 |
葉緑体を含んだ細胞 |
菌糸 |
外形 |
茎、葉の区別なし
固着、樹枝状、葉状 |
茎と葉の区別がある
茎葉体、葉状体 |
茎も葉もない
菌糸の塊、キノコ |
色 |
灰色、黄緑、橙色など |
緑色 |
肌色、茶色など |
ふえかた |
胞子、粉芽、裂芽 |
主として胞子 |
胞子、粉子など |
分類学上の位置 |
菌界 |
植物界 |
菌界 |
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