鳥類音声データベース

このデータベースは、鳥類のさえずりの地理的変異と個体変異を示すものです。
そのため、日本に広く分布する鳥種について、
複数の地域で得た多くの個体の音声資料を公開します。
それぞれの種について、さえずりを聞き、その声紋を見ることで、
さえずりの地域による違い(方言)や個体差を知ることができます。
解説をとおして、さえずりの進化についても考えて頂けると幸いです。

さえずりとは?
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さえずりとは?
鳥の音声は、さえずりと地鳴きに分けられる。それぞれの定義は必ずしも厳格なものではないが、さえずりとは長く続く複雑な声、地鳴きとは短く単純な声のことである。ウグイスならば、「ホーホケキョ」などと聞こえる声がさえずり、「チャッ」などと聞こえる声が地鳴きである。

さえずりは、スズメ目鳥類(小鳥)のオスが春から夏の繁殖期に発する。さえずりには、他のオスを排除してなわばりを維持するはたらきと、つがい相手のメスを誘引するはたらきがある。異なる二種類のさえずりがあるわけではなく、同じさえずりであっても聞く側によって異なる意味の信号となる。

地鳴きは、雌雄や季節を問わず発せられる声である。警戒や集合のための声があることがわかっているが、一般に地鳴きがどのような機能をもつかは研究が進んでいない。この鳥類音声データベースでは、さえずりだけを収録している。
さえずりの違いを生む要因
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さえずりの違いを生む要因
さえずりは同じ種であっても、地域によって、また個体によって違いがみられる。

地域による違い(地理的変異)を生み出す要因にはさまざまなものがある。鳥が生息する場所の植生構造は音の伝わりやすさ、ひいてはさえずりに影響を及ぼす。たとえば、音が減衰しやすい枝葉のこみいった森林では、遠くまで届きやすい周波数が低く節回しが単純なさえずりが用いられる。さえずりの似た近縁種が生息するか否かも、その地域のさえずりに影響する。さえずりは種の認知に関わっているので、異なる種のさえずりが同種のものと誤って判断されると、種間交雑や不要ななわばり争いが生じる。そのため、さえずりの似た他の種がいる地域では、その他種と異なる声でさえずるようになる。また、地域によって種内競争の激しさが異なることによって、さえずりの変異が生じる場合もある。生息密度が高く、オス間のなわばり争いやメスによるオスの選り好みが激しい地域では、それらの競争で有利となるさえずり(たとえば複雑なさえずり)が発達する。

個体によるさえずりの違い(個体変異)は、個体の質を表すと理解されている。さえずりは、幼い時期の学習によって身につく。そのため、ヒナの時に生育がよく、脳が発達していないと、多くの種類の音を覚えることができず、成長したあとで複雑なさえずりをすることができない。また、食物をとる能力が高く、十分な栄養を得て筋肉が発達している個体でないと、複雑なさえずりをすることができない。音を細かく断続させたり、高い音から低い音まで出したりするためには、音を発生させる鳴管部の筋肉が発達している必要があるといわれている。
声紋のみかた
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声紋のみかた
音声の特徴を細かく調べるには、視覚的に表す必要がある。そのためには、サウンドスペクトログラムという図を用いる(ソナグラム、ソノグラムとも呼ばれる)。この図は、横軸が時間、縦軸が周波数(音の高さ)を示す。つまり、右にいくほど時間が経っていること、上に行くほど周波数が高いことを表している。また、黒いシミのような音の部分では、音圧(音の強さ)が濃淡によって示されている。

下の図はウグイスのさえずりを示したものである。図1を見ると、「ホー」という低い音はだんだんと強くなりながら長く続いており、短い「ホ」という音、周波数が激しく変化する「キョ」という音がそれに続くことがわかる。図2では、前半の「ホー」の」部分が断続し、後半は「ヒャ」という一つの音だけからなることがわかる。
図1・2

本来、個体ごとに異なるヒトや鳥の音声をサウンドスペクトログラムで表し、そのパターンを指紋になぞらえて声紋と呼んだ。しかし、一般には、サウンドスペクトログラムのことを声紋と呼ぶこともある。この鳥類音声データベースでも、この呼び方を用いる。
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【許可申請・問い合わせ先】
独立行政法人国立科学博物館動物研究部
(鳥類音声データベース監修) 濱尾 章二
メールアドレス
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  • メジロ

    7地域188個体

  • ウグイス

    12地域311個体

  • ヒヨドリ

    7地域145個体

  • シジュウカラ

    8地域291個体

  • ヤマガラ

    7地域231個体

  • ホオジロ

    5地域74個体