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ホルマリン固定の方法

標本の体表のぬめりを取ります。粘液がついていると固定後、白くなり、標本を観察するとき邪魔になります。また、鰓についた粘液も洗い落とします。

大きな個体(全長20センチ以上)は右側腹部を切り、固定液が標本全体にしみこむようにします。また、ホルマリンを筋肉に注射器で注入する場合もあります。草食性の魚は長い消化管をもっていて、腹部が腐りやすいので、小さい個体でも腹部に切れ目を入れるか、注射器で固定液を腹部に注入する必要があります。


通常は10%ホルマリンを用います(仔稚魚では5%)。市販のホルマリンを買ってきて、ホルマリンを1、水を9の割合で混ぜて固定液をつくります。

ホルマリンは有毒なので、皮膚につかないように注意が必要です。手にはゴム手袋をして、眼はゴーグルで保護するとよいでしょう。もし、ホルマリンが体についたら水で洗い落としてください。

標本はプラスチック容器などに入れて固定します。固定液を容
器の半分くらいまで入れて、標本をその中に入れます。標本が多数ある場合には一度に入れず、1個体、あるいは2-3個体ずつ固定液に「泳がせるようにして」入れます。なお、標本を大量に容器の中へ一度に入れて、後から固定液を入れると標本が腐ることがあります。標本がお互いに密着して、固定液がしみこまず、そこから腐りやすくなります。特に皮膚が柔らかい魚の場合には注意する必要があります。









右側腹部を切り、固定液が標本全体にしみこむようにしているところ


プラスチック容器の中に半分くらい固定液を入れます。
気温が非常に高い場合には、ホルマリンの温度が上昇して、標本が固定される前に腐敗してしまいます。このような場合には、氷をポリエチレン袋に入れて固定液の温度を下げる必要があります。なお、氷を固定液の中に直接入れると濃度が下がってしまいます。



標本(右の写真はレンコダイ)を数尾ずつ固定液に入れます。
また、鰭をたたんだまま標本を固定すると、標本を調べるときに不便です。固定された標本の鰭が開かず、無理に開くと鰭膜を傷めることになるのです。鰭はある程度拡げて固定する方がよいでしょう。

口内の歯の並び方などが重要な形質となるグループもあります(例:ウツボ科、ハマギギ科、フエダイ科)。このような魚類の場合、口を少し開けた状態で固定する必要があります。ウツボ類などを固定するときは、口に発泡スチロールなどをはさんで固定するとよいでしょう。




固定に必要な時間は標本の大きさや魚の種類によって異なります。おおよそ3日から1週間は必要になります。