サバニが集まる新川漁港


沖縄の魚市場
執筆:松浦啓一

沖縄と言うと白い砂浜とコバルトブルーの海、そして色とりどりのサンゴ礁性魚類を思い浮かべることでしょう。私は大学院生の時代に何回も沖縄本島や八重山諸島の石垣島に標本を採集するために出かけました。初めて石垣島に行ったのは1973年のことでした。那覇から船に乗って翌朝、朝8時に石垣島に着くと、太陽の光がまぶしかったことをよく憶えています。

 当時の石垣島には漁獲してきた魚を水揚げする場所が2カ所ありました。一つは波止場近くにあった漁協の魚市場でした。漁協の魚市場には主に大型の魚が水揚げされていました。二つ目は「サバニのたまり場」と呼ばれていた新川漁港で、漁協から徒歩で20分くらいの場所にありました。「サバニ」というのは沖縄の漁師が使う細長い小型の木造船です。このサバニを使って追い込み漁をしたり、釣りをして魚をとるのです。

海から帰ってきた舟
サバニのそばで魚を選り分ける
集めた魚を運ぶ仲買の人達


 私にとって面白かったのは「サバニのたまり場」でした。色々な魚が水揚げされるので、研究用の標本を採集できたのです。毎日、朝8時くらいから「サバニのたまり場」に出かけ、午後4時くらいまで採集をしました。朝の早い時間帯には刺し網漁をする舟が帰ってきます。そして、次に一本釣りをする舟や追い込み漁の舟が帰ってきます。最後にティールグァーと呼ばれていた篭網漁の舟が帰ってきます。舟が帰ってくると仲買人が集まってきて、魚を買って冷蔵庫に持って行き、値段の高い魚は那覇へ送っていました。仲買の人達に混じって漁師と交渉をして、研究用の魚を安く分けてもらいました。

那覇の牧志公設市場の入り口 左側に見えているのは高級魚のハマダイ 公設市場には豚肉や牛肉もあります

 一方、那覇をはじめとする沖縄本島の魚市場にもいろいろな魚が並んでいます。那覇市内の国際通り付近にある公設市場を訪れると、本州や北海道では決して見る事ができない色鮮やかな魚たちにお目にかかることができます。日本列島は北海道から沖縄まで約3000キロあるのですから、そこに住んでいる魚たちも様々です。日本の魚市場は魚を新鮮な状態に保っているので、魚類研究者にとって理想的な場所なのです。