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絶滅植物シビイタチシダの研究

海老原 淳

シビイタチシダDryopterisshibipedis は2007年版環境省レッドリストでEX(栽培も含めて絶滅)と判定されたシダ植物ですが、筑波実験植物園に栽培株が生存していました。
DNAの情報を用いた、シビイタチシダの起源についての研究を紹介します。
産地は1カ所のみ
1962年に鹿児島県紫尾山麓登尾(のぼりお)の人家の石垣で発見されましたが、いつしか見あたらなくなってしまいました。
2種の特徴を併せ持つ
ギフベニシダのDryopteris kinkiensis とオオイタチシダD. pacifica の中間的形態を示すため、両種間の雑種ではないかと推定されてきました。
栽培株で命拾い
一度は絶滅を宣告されましたが、実際には筑波実験植物園と鹿児島県内の個人宅で栽培株が生存していました。また、鹿児島では産地不明ながらシビイタチシダに似た株が栽培されており、これら「筑波」「川原1」「川原2」の3系統についてDNA情報を用いた解析を行いました。
DNAからわかること
・「筑波」と「川原1」は、1株の株分けの可能性大。
・「筑波」と「川原1」はギフベニシダとオオイタチシダの両方の遺伝情報を持っていて、雑種起源説は支持される。
・「川原2」は、他の2株とは全く異なる遺伝情報を持っていて、シビイタチシダではない可能性が高い。(今のところ正体不明)
シビイタチシダは偶然の交雑によって誕生し、やがて野外からはひっそりと消えました。
幸か不幸か、専門家の目に留まってしまったために、絶滅危惧種に指定され、植物園で生き残ることになりました。
我々の知らないところで、何度も生まれては消えている可能性もあります。
またどこかで復活するかもしれない、ちょっと変わった絶滅危惧種なのです

※本研究は松本定研究主幹との共同研究です。

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海老原 淳(えびはら あつし)

海老原 淳(えびはら あつし)

陸上植物研究グループ
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