樋口 正信(ひぐち まさのぶ)
(退官)
研究課題 1. ハイゴケ科の系統分類 2. オセアニア地域のコケ植物相の起源 3. コケ植物の生殖メカニズムの解析 コケ植物は極地から熱帯に至る多種多様な環境に生育し、現在世界から約1万8千種が報告されています。 陸上植物の中では最も原始的な特徴を有し、植物の進化を考える上で興味深いグループといえます。 |
|
1. ハイゴケ科の系統分類 コケ植物には分類学的検討が必要な分類群がまだ多く残されています。 現在、コケ植物の中でも最も大きな分類群の一つであるハイゴケ科について分類学的再検討を進めています。 |
|
ハイゴケ科は60以上の属、1000以上の種を含みますが、それらの系統関係は明らかではありません。できるだけ多くの材料を入手し、分子系統解析を行い、合わせて形態形質の見直しを行うことにより、ハイゴケ科の概念を検討し、本科を再定義することを目的としています。rbcL遺伝子を用いた分子系統解析では、ハイゴケ目は単系統となるものの、その中の科間・属間の関係は明瞭ではなく、ハイゴケ科は多系統となるという結果が得られました。今後、解析に適切な分子種を検討することが課題です。 |
2. オセアニア地域のコケ植物相の起源 -島嶼に見られるコケ植物はどこから来たのか- コケ植物は主として胞子によって繁殖します。胞子は直径数ミクロンから数十ミクロンと小さいために、風に乗ってどこにでも飛んでいき、その結果、現在見られるコケ植物の分布は地史とはあまり関係がないと考えられやすいです。 オセアニナ地域には大小多数の島がありますが、その中の大陸島と海洋島ではかなり異なったコケ植物が報告されています。両者に見られるコケ植物相の比較研究を行い、コケ植物の分布と地史との関係を明らかにする目的でオセアニア地域(フィジー、バヌアツ、ニューカレドニア、ハワイ)で現地調査を行い、収集した標本に基づいて研究を進めています。 |
3. コケ植物の生殖機構の解析 -1ガメテシウム1胞子体形成機構の解析- コケ植物では複数の造卵器とそれを取り囲む苞葉をまとめてガメテシウムと呼びます。有性生殖において、受精後、一つのガメテシウムからは通常一つの胞子体が形成されます。なぜ複数の造卵器で卵と精子の受精が起こり、1ガメテシウムに複数の胞子体が形成されないのでしょうか。しかし、少数ですが蘚類のチョウチンゴケ科、スギゴケ科、シッポゴケ科などのある種では、1ガメテシウムに複数の胞子体が形成されるポリセティという現象が知られています。1ガメテシウム1胞子体形成の機構を明らかにすることを目的に、その足がかりとしてポリセティの研究を行っています。 |
(退官)