>> 植物研究部「私の研究」一覧へ戻る

花の色の発現の仕組みを探る

岩科 司
私たちの身の回りにある色とりどりの花のうち、赤~紫~青色の花のほとんどはアントシアニンという色素群によっています。これらの花の色は基本的には含まれる色素の色が反映されていますが、紫~青色の花の多くは金属やその他の化学成分と細胞の中で複雑に結合しあって色として発現します。その反応は非常に複雑です。これらの花の色ばかりでなく、自然界にある野生の花のほとんどがその色素成分や発現の仕組みは謎のままです。
アントシアニンは広くはフラボノイドと呼ばれる化合物の仲間ですが、これまで自然界で7,000種類以上が発見されています。これらの成分は花では、上記のように花の色として発現していますが、葉や根では、紫外線を防御したり、菌の侵入を防ぐなど、さまざまな機能を担っています。
メコノプシス(Meconopsis spp.) 花色発現の機構の解明

究極の青い花といえば、「ヒマラヤの青いケシ」と呼ばれるメコノプシス(Meconopsis spp.)でしょう。
この青い花のアントシアニンは2,3の植物、で秋のカエデの紅葉に含まれているものと同じ(シアニジン)と判明していますが、約50種あるメコノプシス属のほとんどの花の色素とその発現の機構についてはまだよくわかっていません。
また、この属の黄、赤、紫色の花の発現についてはまったく謎のままです。
メコノプシス(Meconopsis spp.) 植物の紫外線防御機構

紫外線は植物にとって有害ですが、これを防御するために植物はフラボノイドを利用しています。
ヒマラヤの高山に自生するレウム・ノビーレ(Rheum nobile)はその半透明の苞に5種類のフラボノイドを多量に含んでおり、それによって高山の紫外線から中にある花を保護しています。
またこれらのフラボノイドのうちのひとつはこの植物にしかない固有の成分であることも判明しています。
メコノプシス(Meconopsis spp.) 花の色として発現するアントシアニンは基本的には左の6種類です。向かって右側の環(B環)の水酸基(OH)が多ければ多いほど青味を帯び、少ないか、メトキシル化(OCH3)されるほど、赤い色となります。
メコノプシス(Meconopsis spp.) 筑波実験植物園では、茨城大学(修士課程)および東京農工大学(博士課程)と連携大学院を提携しており、植物化学と分子細胞学的研究を行っており、現在第二次の募集を行っています。
展示ポスターはこちらから
岩科 司(いわしな つかさ)

岩科 司(いわしな つかさ)

(退官)

>> 植物研究部「私の研究」一覧へ戻る