紫外線の防御にフラボノイドを利用する植物
岩科 司
動物と異なり、基本的に動くことが出来ない植物は、自身の作る化学成分によって、各種環境への適応を果たしています。そのひとつが紫外線に対する防御です。光合成を行う緑色植物にとって、太陽の光は極めて重要です。しかし、受ける光が多くなるほど、すべての生物にとって有害な紫外線をも多く受けてしまいます。これに対して植物は、大きく2つの方法でこれに対応しています。そのひとつは葉の表面近くに紫外線を吸収する成分を蓄積させることにより、DNAなどの損傷を防ぐ方法であり、そしてもうひとつは、いったん損傷を受けたDNAをいかに早く修復させるかといった修復能力です。この両方に重要な役割を果たしているのがフラボノイドです。植物が紫外線の降り注ぐ陸上に進出できた要因のひとつがフラボノイドの合成能力を獲得できたことだといわれています。
ヒマラヤの高山帯に生育するセイタカダイオウはルチンなどのフラボノイドを半透明の苞葉に多量に蓄積することで、中にある花を紫外線から保護している。
中国固有の植物、ハンカチノキの苞葉もまたフラボノイドを多量に含んでいる。