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熱帯太平洋の古生物研究 海洋生物の多様性の起源をさぐる

加瀬 友喜
熱帯太平洋の古生物研究 フィリピン、インドネシアとマレーシアに囲まれた熱帯太平洋の海域(東インド・マレー三角地帯とよばれる)には大小さまざまな島があり、それらの周囲には美しいサンゴ礁が発達しています。
この海域には世界でも最も多様な生物が生息しています。
東インド・マレー三角地帯の高い多様性の起源を明らかにするために数多くの研究があり、多くの仮説が提唱されています。私の研究室では、北海道大学や横浜国立大学の研究者らと共に、フィリピンやインドネシアの新生代の貝類やサンゴなどの化石から、この海域の多様性の起源をあきらかにする研究を進めています。
フィリピン・ルソン島北部の河原でサンゴ化石を発掘
フィリピン・ルソン島北部の河原でサンゴ化石を発掘
熱帯で化石を採取する
-新たな化石群の発見-

・フィリピンとインドネシアの各地で調査を進めています。
特にフィリピンでは、新生代後期の地層中から多くの新たな化石群が見つかりました。

・フィリピンとインドネシアの新生代の化石は、日本列島の同じ時代のものに比べ、保存状態は極めて良好です。
紫外線ランプによる写真撮影とコンピュータ画像処理による「貝化石の紋様の復元」
A:漂白処理した化石
B:紫外線ランプによる撮影
C:映像を反転する
D:白黒画像にする
E:画像処理を加える
化石を分類する
-紫外線ランプによる写真撮影とコンピュータ画像処理による
「貝化石の紋様の復元」-

イモガイ化石の紋様の復元例
・熱帯の貝類は種類が多く、よく似た殻形態をもつ種がたくさんいます。化石貝類では、軟体部が残らないこと、殻の色紋様が失われるなどの理由で、現生種よりも分類が困難です。例えば色紋様が種を区別する重要な形質であるイモガイ類の化石は、分類が極めて困難です。この研究では、貝化石の殻表面の紫外線ランプによる写真撮影とコンピュータ画像処理を駆使し、紋様の復元をおこなっています。
フィリピン産の新種の貝化石の一部 フィリピン産の新種の貝化石の一部

・フィリピンの新生代貝類の研究は、日本列島やインドネシアに比べ、著しく遅れています。
これまでの調査で、多くの新たな種がみつかっています。
A:サイヅチボラ類の新種
B:スイショウガイ類の新種
C:ミヤコボラ類の新種
D:スイショウガイ類の新種
E:イモガイ類の新種
F:サイヅチボラの新種
G:フネガイ類の新種
H:ツキガイ類の新属・新種
約500万年前の深海の化石「化学合成群集」 貴重な新発見をする
-約500万年前の深海の化石「化学合成群集」-

・フィリピンのレイテ島からシロウリガイの密集する岩塊が見つかりました。これは深海からのメタン湧出冷湧水によって維持される化学合成群集の化石です。これは世界でも最も保存状態の良い化石化学合成群集です。
A:オウナガイの仲間
B:シロウリガイの仲間
C:シロウリガイの仲間
D:シンカイヒバリガイの仲間
展示ポスターはこちらから
加瀬 友喜(かせ ともき)

加瀬 友喜(かせ ともき)

環境変動史研究グループ

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