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アマミノクロウサギの祖先とその進化をさぐる

冨田 幸光
中国安徽省大居山
中国安徽省大居山
アマミノクロウサギは奄美大島にわずかに生き残る、
第一級の絶滅危惧種です。
その祖先に当たるプリオペンタラグスは、分離した歯がチェコと中国から20点ほど知られるだけで、その系統進化についてはほとんど不明でした。
しかし、この10年ほどの間に中国安徽省の大居山で、時代の異なる複数の産地から大量の化石が発見され、その進化の様子がわかってきました。
さらに、以前から知られていた北アメリカの種類が、アジアから移動していったプリオペンタラグスの子孫だということもわかりました。以下、その概要をご紹介します。
研究の概要 研究の概要

ウサギ類の化石は、おもに下顎の第三小臼歯(p3)に見られるエナメル質の模様によって分類されています。PIR とよばれるエナメルの湾入が、プリオペンタラグスの原始的なタイプではエナメル湖とよばれるリング状になっており、それが進化とともにしだいに湾入に変わります。
また、この一連の研究で、プリオペンタラグスの系統にだけ見られる新しい特徴も確認しました。それは、p3の後ろにならぶ第四小臼歯(p4)から第二大臼歯(m2)に見られる小さな湾入(AER)です。その出現の率が進化とともにしだいに少なくなります。
プリオペンタラグスーアマミノクロウサギ 系列のp3の進化 研究のまとめ:
次のように結論できます。
1.中国で発見された化石は、プリオペンタラグス属の異なる3種と判断される。これらとアマミノクロウサギの系統では、
2.大きさがしだいに大きくなる。
3.エナメル質のシワ模様がしだいに複雑になる。
4.p3のエナメル湖の率が小さくなる。
5.p4-m2の湾入の率が小さくなる。
6.北アメリカのアズトラノラグスは、形は中国のいちばん原始的な種類によく似る。
7.p3のエナメル湖の率が常に100%、p4-m2の湾入の率は約80万年前以降、約10%。
8.アズトラノラグスは、中国のいちばん原始的な種類かその近縁種が、600万年前頃に北アメリカに渡り、その後、サイズが小さくなったことと、p4-m2のAERが数万年前でなお約11%残っていた以外には、あまり変化していない種である。
展示ポスターはこちらから
冨田 幸光(とみだ ゆきみつ)

冨田 幸光(とみだ ゆきみつ)

生命進化史研究グループ

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