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南米パタゴニアに植物化石を求めて

植村 和彦
主な調査地

なぜパタゴニア?

ゴンドワナ大陸が分裂し南極大陸が生まれたが、その生成の歴史は、 地球全体の環境や植生の変遷に大きな影響を与えている。南極大陸 に接するパタゴニアの植物化石群から、地球環境と植生の変遷を探 ること、とくに南半球の湿潤温帯の代表的森林のナンキョクブナ林 の起源と発達を明らかにするために調査を行った。日本やアジアの 温帯林の発達史と比較研究するためにも、地球(日本)の裏側の資 料は貴重である。

リゴリオ マルケス リゴリオ マルケスの植物化石層の上位の玄武岩のカリウム・
アルゴン年代は約4800万年前で、化石層は始新世前~中期である。化石群はクスノキ科、ムクロジ科が多く、常緑広葉樹に落葉広葉樹を交えた亜熱帯的な組成を示す。分類学的検討はまだ進行中であるが、少なくとも50種以上の多様な植物群である。
極めて稀であるが、ナンキョクブナ属の葉化石が見出された。南米では最古のナンキョクブナ属葉の記録となる。
ドロテア ドロテアの始新世後期植物化石産地
アルゼンチンとの国境から南を望む。
植物群はリゴリオ マルケスと一部共通するが、
ナンキョクブナをより普通に含む。点在している
木はナンキョクブナ(落葉樹のNothofagus pumilio)

ドロテアはアルゼンチンの国境に接する小さな村で
あるが、貧しい生活でも自然史や歴史・民俗に興味を
持つ現地の人々にいたく感心した。
サン セバスチャン 2500万年前(漸新世~中新世)のサン セバスチャンの植物群。
ここでは、27種の広葉樹とシダ植物が見つかったが、
ナンキョクブナ属が7種、全産出量のうち7割を占める。
その他の広葉樹はフトモモ科やメギ科など
常緑の小型葉が多い。

フエゴ島サン セバスチャンの化石産地と
化石を含む浅海成層。
氷河に接して発達したナンキョクブナ林 現在のパタゴニアで雨量の多い所では氷河に接してナンキョクブナ林が発達している。
より暖かいところでは、常緑および落葉のナンキョクブナ属と常緑広葉樹が混じった森林がみられる。サンセバスチャンの植物群はこの混交林の原型といってよい。
北半球では始新世後期以後(4000万年前以降)、落葉広葉樹林が広く発達するようになるが、南北両半球での温帯林の発達は、地球規模の寒冷化と同調しながら、それぞれ独自性がみられる。
2007年~2009年は国際惑星地球年
地球と生命の歴史を振り返り、
生きている地球をみんなで考えてみましょう。
展示ポスターはこちらから
植村和彦(うえむら かずひこ)

植村 和彦(うえむら かずひこ)

生命進化史研究グループ

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