恐竜展示室の奥のCT室
展示室のヒパクロサウルスの頭骨の強度分析の一例
@Tomoyuki Ohashi
Q1: どうしてCTスキャンが展示室に?
みなさんが病院で検査を受けるCTスキャンよりは小型ですが、小さな部分をより詳しく見ることができるマイクロCTスキャナーという機械です。来館者のみなさんに研究活動をかいまみていただくために、展示室の一角にCTスキャンを設置する事にしました。
Q2: CTスキャンでどんなことが出来るの?
化石と現生種の骨格などについて、CTスキャナーを使用することによって、脳の形や大きさ、三半規管の形、骨密度、骨と骨の関節の度合いなど、通常ならば標本を破壊(分解)しないとわからないデータを得ることができます。また、標本の形を三次元でデジタル化することもできます。
展示室のステゴサウルス
ステゴサウルスの後頭部
ステゴサウルスの脳(紫色)と内耳(黄色)の復元
CT撮影L.M.Witmer(Ohio Univ., USA) 画像モデル化:對比地孝亘(国立科学博物館)
Q3: CTスキャンでどんなことがわかるの?
爬虫類(A)と鳥類(B)の脳の違い
爬虫類では嗅覚をつかさどる部分★の方が大きいが鳥類では視覚★の部分の方が大きな割合をしめている
スケールバー=10o
Witmer et al.(2003)Nature, 425: 950-953
恐竜から鳥類への進化の中で、脳の各部位の形や大きさから、主な感覚器官が嗅覚
★から視覚
★に変化したことがわかっています。2010年1月、恐竜の羽毛の表面に化石として残っていたメラニン色素の形や大きさから、恐竜の色が初めて明らかになりました。羽毛の色や模様はコミュニケーションに使われたかもしれません。嗅覚から視覚への変化の背景には、色や模様や動作の変化があったかもしれません。そのような観点から、脳の変化を考察してみたいと考えています。
Q4: どんな標本をスキャンするの?
メラニン色素から全身の色が復元された恐竜アンキオルニス
Li et al.(2010)Science, 327: 1369-1372
展示室や収蔵庫の標本を順番にスキャンして行きます。平成23年度に国立科学博物館で開催予定の「恐竜博2011」では、海外から実物標本を借用し、CTスキャンしたいと思っています。