テヅルモヅルの進化を探る
藤田 敏彦
深海に暮らす、謎多き動物
深海に生息する動物には分類学的研究が進んでいないものが多く、名前のついていない種も多く発見されます。テヅルモヅルもそんな動物の一つです。どのような種がいてどのような暮らしをしているのでしょうか?
テヅルモヅルとは
棘皮動物門のツルクモヒトデ類に属するクモヒトデの仲間です。漢字では「手蔓藻蔓」などと書きます。ギリシャ神話に出てくる髪の毛が蛇になった怪物であるゴルゴンになぞらえて、学名では「ゴルゴンの頭」と呼ばれます。どちらも腕を樹状に分岐させている様子から名付けられています。テヅルモヅルなどのツルクモヒトデ類は、他の動物にからまって生活しています。主に、100m 以深の海底に生息しており、標本を採るのが難しく、これまであまり研究が進んでいませんでした。
ツルクモヒトデ類の系統分類学的研究
長期にわたる研究船での調査によって蓄積した標本をもとに、DNA の塩基配列による分子系統解析と、電子顕微鏡による骨の形態の観察を通して、新たな知見が得られてきました。ツルクモヒトデ類49種の、核とミトコンドリアDNA の分子系統樹
これまでは形態から大きく4 つの科に分けられてきましたが、分子系統解析によって、そのうちの2科は、進化上は3つのグループ(緑の囲み)に分けられることがわかりました。
新しく見つかった種
日本からはこれまで 、17 属39 種のツルクモヒトデ類が知られていましたが、収集した標本の研究を進めると、続々と新しい種や新しい記録が見つかりました。まだまだ、世界中の海から、新しい種の発見が期待されます。