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日本のトンボはどこからきたのか?

清 拓哉

日本列島を含む東アジアの島々は2000万年ぐらい前から島嶼化が始まりました。現在までに何度も島と大陸、も しくは、島どうしがくっついたり離れたりを繰り返してきました。つまり、様々な生き物の分布域の拡大や孤立化を引 き起こしてきました。日本の昆虫類は比較的多様性が高く、固有種も数多く含まれています。その多様化の歴史 は、この陸域の変動と密接に関わりがあると考えることができます。そこで、いくつかのトンボ類を対象にDNAの配 列をもとに分子系統解析を行って進化の過程を調べてきました。これからは、カマキリやナナフシ といった他の不 完全変態昆虫も調べていこうと考えています。以下に、トンボ類について紹介します。



ダビドサナエ属は日本列島に3種、朝鮮半島に1種分布しています。それぞれ河川の上流域、もしくは、湿地帯の中の流れで幼虫が育ちます。分子系統解析の結果わかった主なこととしては、日本と朝鮮半島の 間で少なくとも2回は祖先集団の往来があり、モイワサナエはダビドサナエと種分化した後、トンボ類にして は著しい地域分化を繰り広げたということです。


オニヤンマは日本だけでなく、朝鮮半島や中国にも分布していますが、形態の地域変異が大きく、研究の余地の大きいトンボです。分子系統解析をしてみると、2つの大きく異なった系統が含まれており、さらにそれぞれ3つのグループに分かれます。琉球列島を単純に北上して分布域を広げたのではなく、沖縄本島以北と八重山諸島以西のグループの間で独立に分布域の変遷があったと考えられます。

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小松 浩典(こまつ ひろのり)

清 拓哉(きよし たくや)

陸生無脊椎動物研究グループ
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