一寸の蟹にも五分の魂
小松 浩典
カニを研究していますと言うと、よく「食べられますか?」と聞かれます。食べられないこともないのですが、ほとんど食べたことはありません。なぜなら私が研究対象にしているカニは食べるには小さすぎるからです。逆に言うと食用になるほど大きくなるものはほんの一握りで、ほとんどのカニは一寸(=3.03cm)にも満たないのです。しかし、小さいからと言って、侮ってはいけません。その小さな体は機能美の結晶であり、生きるための知識がぎっしり詰まっているのです。まさに一寸の蟹にも五分の魂と言えるでしょう。
私はそんな小さなカニの記載分類を行っています。
私はそんな小さなカニの記載分類を行っています。
私が名前をつけた新種
これから名前をつける未記載種
これからの課題
カニと言えば、よく知られている生き物のように感じられますが、ご覧のようにまだまだ名前の付いていない種が数多く存在します。ましてや体長数ミリにも満たない小型甲殻類に至っては名前のついている種の方が少ないくらいです。環境破壊が進む現在、中には名前のないまま絶滅してしまう種も出てくることでしょう。我々分類学者に出来ることは一刻も早く記載して、世間に周知することです。しかし、分類学者自身も絶滅に瀕しているのは皮肉なことです。私の名前がついた新種
新種に自分の名前を付けてもらえるのは分類学者にとって望外の幸せです。