イカとタコ、私たち日本人の大好きな海産物ですが、なん種類のイカ・タコがいるのか、どのような場所にいるのか、どのような生活を送っているのか、その分類や生態などまだまだ分からないことが多く残されています。
それを明らかにしていくのが、私の研究テーマです。
頭足類の分類と分子系統に関する研究
今までに世界の海洋から約900種のイカ・タコが報告されています。しかし、調査の及ばない深海やサンゴ礁に潜むイカ・タコのなかには、学名の付けられていないものがいます。最近の研究では沖縄近海から、オキナワミミイカ、ソデフリダコ、ナギサアナダコ、オグラグンバイダコ、ツノナガコダコの5新種を報告しました。今までに採集した深海性タコ類やコウイカ類にも未記載種が残されています。最近、mtDNA (COI)をもちいた頭足類全体の分子系統解析も進めています。
海洋生態系‐食物網に関する研究
私たちがイカ・タコを食べるのが好きなように、海にすむ大型動物もイカやタコが大好物です。特にマッコウクジラは、海域によっては餌の90%以上がイカ・タコ類です。2000年から西部北太平洋で日本調査捕鯨により捕獲されたマッコウクジラの胃内容物を調べています。マッコウクジラが深く潜り捕食することから、通常の調査では採集されないオオトガリウチワイカやヒロビレイカ、ダイオウイカなど非常に稀な中深層性大型イカ類が見つかります。また、胃に残された頭足類の顎板(ビーク)から種査定と体重・体長復元に関するマニュアルをインターネットを通じて公開しています。
中深層性大型イカ類の生態に関する研究
マッコウクジラが餌としている中深層性大型イカ類に迫ることを目的に、2002年から小笠原近海で小型水中カメラ、深海HVビデオカメラを用いて調査を続けています。2004年には世界初となる深海における生きたダイオウイカのデジタル画像を撮影し、学術誌に公表して世界中の注目を集めました。2006年には、ダイオウイカを生きたまま海面まで釣り上げ、その行動を撮影して、世界に発信しました。さらに、2007年にはヒロビレイカの遊泳行動や捕獲行動、発光によるコミュニケーションをHV映像を基に解析し、学術誌に公表しました。この成果も国内のみならず欧米のメディアで広く報道されました。この調査は、継続中です。新しい発見をご期待下さい。
イカとタコは貝の仲間(軟体動物)ですが、動きやすいように貝殻を薄く平たくして体の中に入れたり、まったくなくしたものもいます。筋肉ポンプの外套膜に海水を吸い込み漏斗から勢いよく噴出すジェット推進で、海のなかを自由自在に泳ぎ回ることができます。タコは8本、イカは2本の触腕を加え10本の腕をもっていて、腕についている吸盤で大きな餌でもたくみに捕まえて食べることもできます。さらに体色を変幻自在に変えてカモフラージュしたり、敵におそわれると墨をはいて逃げ出すこともできます。なんといっても、イカとタコは海のスーパースターなのです。