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 調査船は走る研究室

倉持 利明
資料を収集して、それらを整理・保管し、調査研究を通して得られた知見をもとに展示を始めとした教育普及活動等を行う博物館において、 資料の収集は博物館活動の根幹をなす重要なものです。 特に海の生物を研究対象とする私たちにとっては、船を使っての外洋調査は必須のものとなります。 私も当館に着任以来、毎年10 日〜20日程度の乗船調査を行ってきました。私の仕事は魚の寄生虫を集めることで。 今年度も昨年10 月2 日〜11 月3 日に東北沖の北太平洋深海域で調査してきました。
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1. (独)水産総合研究センター所属の漁業調査船「若鷹丸」(692t)。国立科学博物館が行っているプロジクト研究「深海性動物相の解明と海洋生態系保護に関する基礎研究」もその第四期を終わろうとしている。この「若鷹丸」には、本プロジェクト研究が東北沖の太平洋深海域に舞台を移した2005 年(平成17 年)以来、毎年お世話になってきた。「若鷹丸」は最新鋭の装備と設備をもつ超ハイテク船で、私にとっては理想的な研究の場である。

2. 出航日の朝、調査員仲間と記念撮影。この日の塩竈港は晴天、微風。みな余裕のV サイン。この余 裕が入港まで続くと良いのだが。

3. 「若鷹丸」の一室に設けられた私の研究スペース(俗称:倉持研究室)。解剖道具、実体顕微鏡、標本瓶、スライドグラス、固定液等、魚を解剖して寄生虫を採集するための装備一式が並んでいる。手前のコーヒーカップとタバコも必需品、私の根性の源である。

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4. オッターボード(左右の舷側につり下げられた巨大な鉄板)が揚収され、ワープとウィンチワイヤーとを付け替える。船の作業は常に危険が伴う。

5. ゴロゴロと浮き球が揚がってきた。揚網終了まであとわずか。

6. トロール網の末端が揚収されて揚網終了。クレーンで吊り上げて漁獲物をカゴに移すのだが....

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7. このカゴを運ぶのがなかなかたいへん....

8. 仕分け作業(ソーティング)。種類ごとに漁獲物を仕分ける。この作業が正確に迅速に終わるかどうかで、調査全体の流れが決まってしまう。

9. 外網(目合いの大きい内網を抜けた漁獲物を捕らえるカバーネット)の漁獲物を黙々と仕分けるこのお二人。機関長(左)と繰機長(右)。

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10. キチジが捕れた。キチジはこの海域で捕れる最高級魚。そこで、キチジ漁をこの海域の基幹産業として維持するために、東北区水産研究所では長年にわたりキチジの生態を研究し、資源量の動向を調査している。数を数え(10)、重さを量ると(11)、俗称「耳石工場」と呼ばれる工房がオープンする(12)。

「耳石工場」では、1 匹ずつ体長を計り(13)、魚の年齢を調べるための耳石を採集する(14)。こうして毎年、膨大な量のデータと標本が収集され蓄積されていく。

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15. 一日の操業が終わっても船の仕事は続く。この日は若手の甲板員が夜更けまで網の修繕作業をしていた。私の仕事もこの操業終了後になってようやく本格化する。

16. 水深1800m の深海底から漁獲されためずらしいソコボウズ。
このソコボウズから何種類かの寄生虫が得られたのも今回の大きな成果のひとつだ。

展示ポスターはこちらから
倉持 利明(くらもち としあき)

倉持 利明(くらもち としあき)

(退官)