新発見ぞくぞく ハバチ類の研究
篠原 明彦
幼虫が植物の葉を食べる原始的なハチの仲間であるハバチ・キバチ類を研究しています。この仲間は日本から約800種が知られていますが、まだまだ新しいものが見つかるので、実際には少なくとも1000種はいると考えられています。ハバチ・キバチ類の14の科のうち、とくにヒラタハバチ科とミフシハバチ科の系統分類に力を入れています。
ヒラタハバチ科
ヒラタハバチ科は世界で300種近くが知られています。日本の種についてはかなり良くわかっていますが、かれらがどのように大陸から分布を広げ進化してきたかを知るために不可欠なアジア大陸のヒラタハバチ類の研究はまだ断片的にしか行われていません。ここ数年の中国各地での現地調査で、これまで知られていなかった種が続々と見つかっています。ミヤマウラジロイチゴを食べるクロズハラアカヒラタハバチPamphilius hortorum(Kulg, 1808)の卵(1)、幼虫(3-7)とその巣(2,葉をまいて中にすむ)。2009年にアジアで初めて記録された(Shinohara & Kojima, 2009より)。
中国湖南省で2010年に採集されたヒラタハバチの未記載種(まだ名前の付けられていない種)。
チュウレンジハバチ類(ミフシハバチ科)
チュウレンジハバチ類と言えばバラやツツジの害虫として知られています。成虫はよく似たものが多いのですが、幼虫は種によって形態や食べる植物に大きな違いがあり、これまで困難だった種の分類に大変役立つことが分かりました。この研究によってこれまで20種あまりとされていた日本産のチュウレンジハバチ類が実は40種近くいることが明らかになりつつあります。中国産の2種の近縁なチュウレンジハバチ類の産卵管。この鋸状の産卵管で葉の縁を切り裂き葉の内側に卵を産みつける。鋸の形状は種によって少しずつ異なる(Shinohara & Hara, 2010より)。
幼虫がミツバチグリやワレモコウを食べるシリグロチュウレンジArge indicura Shinohara & Hara, 2009の産卵中の成虫(A)、卵(B)、各齢期の幼虫(C-K)、繭(L)。2008年に幼虫が発見された(Shinohara & Hara, 2009より)。