顔の誕生
日本人の顔の変遷
古代から現代までの日本人の顔の変遷
時代の顔
“いかにも”な平均顔
有名人の頭蓋骨模型
未来顔
哲学者デカルト、初来日!
世界一のマスクコレクションも登場
ワックスモデル
ザ・化粧
コンピュータの診断による「自分の顔の印象」
歯はこんなに大事
顔工房
顔のミニギャラリー/名画の中の顔
イベント

顔の誕生

 生き物が生きるためには食べなくてはなりません。そこでまず口ができ、食べやすいように体の進行方向の一番前にできたのです。そして、その周辺が顔に発展し、食べ物を匂いで知るために嗅覚器官である鼻ができ、さらに敵から身を守り、獲物を識別するために目ができたといわれています。
 動物が顔を持ったのは数億年前といわれていますが、なぜ顔を持つ必要があったのか。軟体動物から魚類、類人猿を経てどう変化したかを明らかにし、顔の構造を解剖学、人類学の観点から分かりやすく紹介します。

【展示物】

 本州中部以南、西部太平洋などの砂底に生息し、人間の顔の祖先といわれるナメクジウオからトカゲ、イヌ、チンパンジー、類人猿、人間へと進化する過程を解説する頭蓋骨標本、パネルなど。

 

日本人の顔の変遷

 ここでは、「移り変わり」をキーワードに、古代から現代に至るまで、日本人の顔がどのように変化してきたのかを考察します。日本人の顔の構造の変遷を紹介します。

 

古代から現代までの日本人の顔の変遷

 港川人、縄文人、弥生人、古墳時代人、江戸時代人、現代人の頭蓋骨、レントゲン写真、CGなど

 

時代の顔

 原節子、吉永小百合、山口百恵、夏目雅子……。いずれも一世を風靡した大スターたちです。なぜ彼女は「大スター」になれたのでしょうか。演技がすばらしかったり、歌が上手かったりとさまざま理由は考えられますが、やはり彼女たちはみな美しく、魅力的な「顔」を持っていたことも見逃せないでしょう。
 しかし時代とともに、求められる理想の男性像・女性像が変化する中で、“美”は移り変わってきました。特に「顔」はその顕著な例ではないでしょうか。

 ここでは、50年代から90年代までのヒーローやヒロインの顔写真を展示し、時代を代表する「顔」を紹介します。

 

“いかにも”な平均顔

 「平均顔」という言葉をご存知ですか? 

 目、口、耳、頬など顔のパーツの位置は、人によって違います。たとえばAさんとBさんの目尻の座標をちょうど2人の中間にとると、「平均の目尻」ができあがります。このようにさまざまなパーツに細かく何十ヵ所とマークし、そのデータをコンピュータで平均化することによって「平均顔」を作ることができるのです。
 政治家、銀行員など、ある特定の集団の顔を集め、平均顔を作ると“いかにも”な顔ができ上がります。その集団に共通する特徴が浮かび上がってくるのです。個の識別/顔を認識する本能
 人間は誰でも、第一印象で年齢や職業、さらには性格までカテゴリー分けしてしまいがちです。これはどのようなメカニズムで行われているのでしょうか。
 また、「人面魚」という言葉が流行りましたが、人間の顔でないものを顔のように見てしまう習性も私たちにはあるようです。これらの顔に対して持つ特別な認識プロセスを紹介します。


【展示物】

・ 南伸坊氏、吉田勝彦氏らの描く似顔絵とコンピュータが作成する似顔絵の対比
・ 清水ミチコさんなどによる顔真似
・ 「本当のモナ・リザはどれでしょう」。コンピュータで加工したモナ・リザの表情変化
・ 木の芽など「顔でないのに顔に見える」さまざまな写真

 

有名人の頭蓋骨模型

 MRI(磁気共鳴映像法)機器は、皮、筋肉、骨などを輪切りにして撮影できる装置で、主に医療現場で用いられています。頭の部分のデータを取って、造型技術で立体化させると、できあがるのは……頭蓋骨! 今まで、生きている人間の頭蓋骨を見ることなどできないのが当たり前でしたが、技術の進歩により思いがけない“遊び”ができるようになりました。
 篠原ともえさん、南伸坊さん、坂崎幸之助さん(The Alfee)ら、現在活躍している有名人の皆さんが協力してくれました。もちろんご本人も自分の“頭蓋骨”とは初対面です。

 

未来顔

 日本人の顔のルーツは縄文人の「南方系の顔」と弥生人の「北方系の顔」に区別できるといわれます。いまは『小顔ブーム』などといわれますが、実際に日本人の顔は小さくなっているのです。人類学の立場から100年後の日本人の顔の骨を予測すると、あごが極端に小さい逆三角形になります。同じことを、50年前の高校生の顔のデータと現在の高校生の顔のデータをコンピュータに入力して予測してみると、ほぼ同じ結果が得られるのです。日本人の食生活が変化し、柔らかいものを主として食べ、噛む回数が減り、あごの発達に影響しているのではないかといわれています。
 縄文人と弥生人が混ざって現代人の顔となり、未来の顔へと移行してゆく様子を解説します。

【展示物】

・ 縄文人、弥生人、古墳時代人、現代人、未来人の顔モデル(復元イラストなど)

哲学者デカルト、初来日!

 今回、「我思う、ゆえに我あり」の言葉とともに世界史の教科書でお馴染みの17世紀フランスの大哲学者デカルトに登場してもらいます。彼は、まわりにある一切を疑いました。歩いている人をみても、「実は人間ではなくて、機械じかけじゃないのか?」、笑っている顔をみても「実は怒っているのか?」などと一切を疑っていた人です。
 会場では、パリ人類博物館所蔵のデカルトの頭骨が特別展示されます。さらに、その骨から人類学データをもとにデカルトの顔を復元します。さて、彼の肖像画とこの復元模型を比較してみると、肖像画の方が少し堂々として見えます。どちらが本当に彼の顔だったのでしょうか? 疑り深いデカルト自らが、明らかにしてくれるでしょう。


世界一のマスクコレクションも登場

 デスマスク、ライフマスクのコレクションでは世界一といわれる米プリンストン大学図書館から、日本に初めてその一部が出品されます。往年の米大統領ワシントン、リンカーンや皇帝ナポレオン、天文学者ニュートンなどのマスクがお目見えする予定です。
 ライフマスクの作成は、当時の技術からすると大変な“忍耐”が必要でした。まず呼吸の問題。ストロー状の筒を鼻にさし、約15分間静止状態を取らなければなりません。その間、ストローが奥に入りすぎてしまうことなどがあり、相当辛いものだったようです。実際に、ワシントンは窒息しかけたそうです。そして最大の難問が、石膏が固まる際に発する大量の熱です。約40度に達し、呼吸のままならない状況での15分間は、かなりきつかったことでしょう。
 そこまでして彼らは、なぜマスクを作ったのか? 顔の神秘への、あくなき追究でしょうか。

 

ワックスモデル

 イタリア・サルデーニャ島から、約200年前の蝋細工がやってきます。と言ってもただの蝋細工ではなく、人体解剖の精巧な模型なのです。
 17-18世紀のヨーロッパでは、人体解剖学は科学の花形でした。その最先端にあったイタリアでは、人体解剖の最新知識を広めるため、解剖学者が蝋細工師と協力して、次々と解剖の模型を作り上げていきました。
 中でも今回、カリアリ大学から出品される「顔」の蝋模型は、解剖学的な正確さはもちろん、芸術的にも評価の高かったクレメンテ・スシーニが制作したものです。そのリアルさばかりではなく、技術水準の高さと時代の雰囲気にも、きっと驚かれることでしょう。

 

ザ・化粧

 シーザーが愛した絶世の美女クレオパトラは、青いアイシャドーをよく使ったと言われています。人類の誕生と時をほぼ同じくして生まれた化粧、それは単なる美への追求から生まれただけではありません。
 特別な祭祀や宗教的な儀式の際に、多彩な色を施した化粧、極楽鳥の飾り羽根や動物の骨、仮面などが使われることがあります。現在でも未開発の地域やジャングルなどに住む先住民に見られ、よく冒険物のテレビ番組で目にする光景です。これらの身体を飾る行為は、戦士としての勇敢さや、宗教的身分の高さなどの象徴として使われたほかに、魔除けの意味もあったようです。
最近は女性ばかりでなく、男性の関心も高い化粧について、
(1) 古今東西の化粧
(2) 日本の化粧史
(3) 化粧の効果
という3つの観点から、化粧の持つ意味、歴史、その効果的使用法を詳しく解説します。
さらに、1920年代から80年代までのメークの移り変わりを再現するため、CMやドラマでおなじみの
女優がモデルとして協力してくれることになりました。こちらもお楽しみに。

【展示物】

(1) 古今東西の化粧、仮面

    ・京劇の化粧を施したドール(関羽、曹操、楊貴妃、孫悟空)
    ・歌舞伎の化粧を施したドール(助六、梅王、女形)
    ・狼男の作成過程を紹介した特殊メーク
    ・インドネシアの仮面など(国立民族学博物館蔵)

(2) 化粧の歴史(古代から現代に至る我が国の化粧品、化粧法)

    ・江戸時代、大名家が使用した化粧道具一式
    ・棒口紅やファンデーションなど明治、大正期の化粧品

(3) 化粧の効果(化粧が持つ“魔力”を紹介)

    ・同一のマネキンを元に、化粧だけでモナリザなどを作成

 

コンピュータの診断による「自分の顔の印象」

 あなたが引き立つ顔は、どんな顔なのでしょう? シャープな顔? 若く見える顔? それとも…。
 まずあなたの顔の印象を、コンピュータで解析してみましょう。輪郭や目、鼻、口などのパーツが直線的だったり曲線的だったり、離れていたり寄っていたりというポイントで、大まかな分類ができます。
 これを踏まえて、あなたにぴったり来る化粧法を見つけ、そのノウハウを覚えていきましょう。たとえば眉の描き方、口紅のつけ方、頬のぼかし方……。ちょっとした違いで、印象はかなり変わるものです。

 

歯はこんなに大事

 「咬み合わせが悪い」「歯並びが気になる」。実は顔の形成にも大きな影響があるのです。顔と歯の密接な関わりを再認識します。

【展示物】

・ 歯科矯正により歯が移動していく様子のモーフィング映像
・ 歯が抜けると顎の骨も弱ることを示すレントゲン写真

 

顔工房

 自分の顔、他人の顔を使って遊んでみたい、イタズラしてみたいと思ったことはありませんか? 自分の顔や一緒に来た人の顔をコンピュータに取り込んで、福笑いやモンタージュなどで遊んでみましょう。
 また、豊かで魅力的な表情を作る「表情筋トレーニング」も取り上げます。


【展示物】

・ デジタル福笑い
・ お肌チェッカーほか

 

顔のミニギャラリー/名画の中の顔

顔に対する特別な“執着”の表れともいえる肖像画を取り上げます。日本人と西洋人との肖像画作成上の違いから、顔認識での国民性の違いも浮き彫りにします。美術ファンに限らず、興味深い内容です。

【展示物】

・ ゴヤ「イザベル・デ・ポルセール」、レンブラント「杖を持つ母の肖像」、ベラスケス「フェリペ4世の肖像」、喜多川歌麿「美人五面相」、平賀源内「西洋婦人図」など(いずれも写真)

 

イベント

 ステージ上では週替わりイベントが予定されています。ヘアカットのデモンストレーション、顔をテーマにした講演会など楽しいイベントが目白押しです。

 なお、7月31日(土)の午後2時からは、清水ミチコさんと南伸坊さんの対談「顔、似てるかな」を予定しています。ご期待下さい。