平成15年1月29日は日本近代医学の父とも称される北里柴三郎博士の生誕150年の節目にあたります。同博士がドイツ留学中に成し遂げた破傷風菌の純粋培養と、それに続く抗毒素抗体の発見・血清の発明は免疫学誕生の礎となり、その後のワクチン等の開発にも応用されるなど、予防医学上の重要な基礎を築きました。
この原理を、当時蔓延を繰り返していたジフテリアの血清療法に応用し、この成果に対して共同研究者であったべーリング博士に第1回ノーベル生理学医学賞が贈られました。
ドイツより帰国した北里博士は、ペスト菌を発見するなど学術上重要な業績を残すと共に後進の研究者の育成にも力を注ぎました。
また、北里博士は伝染病研究所や慶應義塾大学医学部を創設して研究者、教育者としても活躍しましたが、結核予防協会や日本医師会を設立して社会的な面での先駆者でもあり、これらを通じて日本国民の健康の維持・向上にも大いに貢献しました。
昨今は医学の発展や医療技術の高度化に伴い、種々の疾病に対する適切な処置法も確立されておりますが、SARS、HIV/AIDS、結核、マラリアをはじめとする新興・再興感染症の出現や、薬剤耐性菌、新型インフルエンザ等により、一度は克服されたかのように考えられていた感染症への脅威が再び人類を脅かしております。
このような背景の下に、北里柴三郎博士生誕150年を記念して、約100年前に世界に冠たる細菌学・予防医学に偉大なる業績を残した北里博士とその門下生達の気概に触れ、現実に直面している感染症研究の今後を考えるための一助となれば幸いと考え、本記念展を企画致します。
併せて、これを機に、近代日本の医学を世界的水準に高めた博士の偉業を青少年を中心とした国民に広く紹介し、我が国の医学の土台を築き上げた先人に対する尊敬と、日本人としての誇りを育むと共に、青少年が科学に対する興味と関心を抱くための契機となれば幸いです。
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