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相模湾が世界的に有名なことを知っていますか?

相模湾は、東京近郊の人々にとって、気軽に出かけることのできる身近な海でしょう。その沿岸に位置する江ノ島や葉山などは、明治時代から避暑地などとして栄え、現在でも海のレジャーを楽しむ人々でにぎわっています。それではこの馴染み深い相模湾とは、どのような海なのでしょうか。相模湾は、世界でも有数の多種多様な海産動物が生息し、また、数多くの生物学的に重要な動物が発見されてきた海なのです。

相模湾調査130年史

これまでのたゆまぬ調査と、その結果収集された「標本」についての研究により、相模湾が海産動物の豊富な海であることがわかってきました。相模湾での調査は、今からおよそ130年前、文明開化華やかな明治初期に、お雇い外国人教師として来日した、ひとりの博物学者の興味がきっかけとなりました。彼の名はデーデルラインといいます。デーデルラインが相模湾の価値を発見した後、相模湾の海産動物への興味がまずヨーロッパを中心に高まりました。ヨーロッパの研究者におよって始められた調査は、日本の研究体制が整うにつれ、東京大学の三崎臨海実験所を訪れる数多くの日本人研究者によってなされるようになりました。その後、昭和天皇が約60年にもわたり相模湾の調査をされ、珍種・奇種を含めてたくさんの発見がなされました。ひとつの海域が、これほどまで長期にわたって調査されたのは、たいへん珍しいことです。そして、相模湾では調べれば調べるだけ、さらに新しい発見があります。国立科学博物館もこの調査の歴史を引き継いで、現在も相模湾の調査を行っています。

100年以上前に相模湾で採集され、新種記載された普通種のタイプ標本 ホテイエソ(ストラスブール動物学博物館蔵)→

ホライエソ画像

東京大学三崎臨海実験所

デーデルラインの調査が契機となって、1886年に設立された東京大学三崎臨海実験所。明治から大正にかけて、日本人研究所や、ドフラインなど欧米の研究者による活発な自然史研究が行われました。

設立当初の三崎臨海実験所
設立当初の三崎臨海実験所
相模湾産ガラス海面を研究する飯島魁博士
相模湾産ガラス海面を研究する飯島魁博士

昭和天皇による相模湾のご研究

昭和天皇は、葉山御用邸や須崎御用邸ご滞在の折、相模湾で調査をされました。御用邸近くの海岸でのご採集に加え、沖合に船を出されてはドレッジという調査器具をお使いになり、水深500mまでの海底からさまざまな海産動物をご採集になりました。ご採集標本には、生物学的に重要な種も数多く含まれています。ご採集標本のうち、ご専門のヒドロ虫類以外は、専門の研究者に研究をゆだねられ、数多くの成果があがっています。

コトクラゲ
コトクラゲ
昭和天皇ご使用のドレッジ
昭和天皇ご使用のドレッジ
ドレッジポイントが記された海図
ドレッジポイントが記された海図

国立科学博物館による「相模灘の生物相調査」

国立科学博物館は、2001-2005年の5ヶ年をかけて、相模湾とその沿岸域で動植物相の調査を行い、21世紀初頭における相模湾の生物相を明らかにしました。さらに、過去に蓄積された研究成果との比較を通して、相模湾とその沿岸地域における環境の変遷、都市化の影響についても検討を行いました。

伊豆半島における陸上植物の調査
伊豆半島における陸上植物の調査
相模灘の生物相調査で発見された新種コブモロトゲエビ
相模灘の生物相調査で発見された新種コブモロトゲエビ
相模湾固有種の可能性があるフクレツノガニ
相模湾固有種の可能性があるフクレツノガニ

相模湾での新たな発見

しんかい2000などの潜水調査船の活躍で、相模湾の深海から新たな発見がなされています。

ハオリムシ類
ハオリムシ類
シロウリガイ類
シロウリガイ類

なぜ相模湾は生物相豊富なのか?

日本は非常に豊かな海産動物相に恵まれている国です。たとえば、海産動物の属や種の数を日本と地中海、北米の東岸、北米の西岸と比較すると、多くの分類群で日本の方がかなり多いことが知られています。その理由として、南北に長い日本は、熱帯・亜熱帯系の種から寒帯・亜寒帯系の種までを産し、また固有種も多いことをあげることができます。さらに、海岸地形や海底地形の複雑なことも理由となっています。その中でもとくに、海産動物相が豊かなのが相模湾であり、比較的狭い海域に途方もなく多様な動物が生息しているのです。それは、相模湾の位置や気候、地形が、多種多様な海産動物の生息に適した条件をそなえているからです。

相模湾海底地形
相模湾海底地形

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