ケルビン潮候推算機
歯車とワイヤーで構成されたこの美しい機械は、英国のケルビン卿(ウィリアム・トムスン:1824-1907)が潮位を予想するために考案した計算機です。入り江や港湾などの潮位を正確に予想する事は、海運国の英国にとって極めて重要な事でした。ケルビンは熱力学や電磁気学の分野で大きな足跡を残していますが、この分野でも成果を残しています。本資料は、実際に1930(昭和5)年から1960(昭和35)年まで中央気象台(現在の気象庁)が日本沿岸の主要地点の潮汐予報を行うために使用していました。
潮汐は月や太陽などの天体の引力により引き起こされ、ほぼ2週間を周期として高低を繰り返します。このように周期的な現象は、一見それがどんなに複雑に見えても、基本となる単純な波(単振動)とそれの2倍や3倍の高い周波数の波(高調波)に分ける事ができます。本機の場合、潮汐の波を15個に分けて計算します。各波の大きさ(振幅)、周波数と位相(波のずれ)は2週間以上の潮位の変動を記録し、このデータを分析し見つけ出します。
本機の下部には外部動力により駆動するシャフトが横方向に通っており、大きさの異なる15個の歯車が付いています。このそれぞれの歯車から振幅と位相の異なる動きを上部にある15個の滑車に細い棒を通して伝えます。15個の滑車はそれぞれの速さ、大きさで上下に単振動を行います。この滑車に左端を固定した糸を通すと、糸の右端は各滑車の動きを足し合わせた動きをします。そこで一定の速度で回転するドラムに記録紙を巻き付け、糸の右端にペンを付ければ、合成した潮位曲線を得ることができます。(提供:気象庁)