国産最古の飛行機~モ式六型
「モ式6型」の原型機体は、1913年(大正2年)に陸軍が輸入したフランスのモーリス・ファルマン式1913年型複葉機です。本機はこの飛行機を陸軍において改造したもので、モ式4型を経て、モ式6型では搭載したエンジン等すべてが国産化されています。
国産化の進展は、まず日本最初の飛行を行ったアンリ・ファルマン機をベースにし、徳川大尉らによって「会式」機体改造から始まり、ついでモーリス・ファルマン機でも何機かの改造国産モ式が製作され、そのうちのモ式一五号と一六号は、1915(大正4)年2月に日本最初の東京~静岡~名古屋~大阪間往復の郵便輸送飛行に成功しています。そして研究を進めていた陸軍東京砲兵工廠において発動機(最初がルノー70馬力)の製作に成功し、モーリス・ファルマン1913年型の尾翼と機首部分を改造したものに、国産のエンジン(ルノー70馬力、同80馬力、カーチス100馬力)を積んだ「モ式四型」が陸軍の飛行機として採用されたのです。さらにモ式四型機の発動機を、やはり砲兵工廠で国産化に成功したメルセデス・ダイムラー式100馬力に変更したものが、1917(大正6)年に採用されて「モ式六型」となりました。
国立科学博物館のモ式六型エンジンは、ダイムラー式100馬力で銘板には「ダ式六型 143 大正8年6月 東京砲兵工廠」とあり、プロペラは木製で銘板に「No.72 砲具製 大正十年一月製」とあります。エンジンとプロペラの製作年が異なるのはプロペラが交換部品のためでしょうか。陸軍の記録によれば、陸軍が東京砲兵工廠において航空機エンジンの研究、製作を始めたのは1914(大正3)年からで、先のモ式四型用のルノー70馬力エンジン4基が同年に製造されています。1916(大正5)年には「ルノー式」7基とともに、「ダイムラー式100馬力」1基が製作されています。以下、1917(大正6)年「ルノー式」6基、「ダイムラー式」6基、1918(大正7)年「ルノー式」23基、「ダイムラー式」23基、1919(大正8)年「ルノー式」18基、「ダイムラー式」32基と、製造は年を追う毎に増加しています。国立科学博物館のモ式六型エンジンは、1919(大正8)年に製造されたうちの一台で、1916(大正5)年からの通算で43番目(最初の「1」は100馬力の意味)のものです。消耗品のプロペラは、1910(明治43)年12月の飛行機の初飛行以後、1911(明治44)年から製造が始められており、1921(大正10)年の年間製造プロペラ数は1084本に及んでいます。
以上から、国立科学博物館のモ式六型は、1919(大正8)年から遅くとも1921(大正10)年に組み立てられた機体と考えられます。本機は1952(昭和27)年にどの様な経過か詳細は不明ですが、東北大学機械工学科から解体した状態で発見され、一時九段の靖国神社宝物遺品館に展示された後、1979(昭和54)年に国立科学博物館に寄贈された現存する国産最古の飛行機です。
「モ式6型」諸元
製作:陸軍東京砲兵工廠
座席:2
エンジン:ダイムラー式100馬力(国産)
全長:9.33m
全幅:1613m
最高速度:110km/h