3万年前の航海 徹底再現プロジェクトとは
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分かっているのは、彼らが移住に成功したこと。わからないのは、どうやって来たか。
沖縄ルート、難関の大航海の再現実験
最初の日本列島人は、3万年以上前に、海を越えてやって来ました。それは、アフリカを旅立ったホモ・サピエンスが、陸域を越えて海にも活動域を広げながら、世界中へ大拡散した壮大な歴史の一幕。中でも島が小さく遠く、世界最大の海流である黒潮が横たわる琉球列島への進出は、当時の人類が成し遂げた最も難しい航海だったと考えられます。「最近になって明らかにされてきた、この祖先たちの海への挑戦を、できる限り詳細に解き明かしたい――」
私たちはそんな思いに駆られて、このプロジェクトを立ち上げました。ここでは彼らの大航海を研究し、さらに海の上で再現(実験航海)することによって、未知の世界を切り開いた祖先たちの知られざる姿に迫ります。 総勢60名の研究者・探検家・運営スタッフが協力する一大プロジェクト。遺跡に残っていない舟は、候補となる草・竹・木のものを試作し、海上テストを行って、絞り込んでいきます。さらに当時の地理・海流、移住者数、帆の有無など、様々な研究を進めて、3万年前の「徹底再現」を目指します。
これまでの活動
2016 草束舟の実験 与那国島
与那国島に自生しているヒメガマという草を、ツル植物で縛って舟を作りました。そして男女の漕ぎ手が、時計やGPSを持たすに、風や波などから方角を読みとって西表島を目指すテスト航海に挑みました。2017-2018 竹筏舟の実験 台湾
台湾との共同体制の下、竹の舟の実験を行ないました。浮力・安定性と耐久性にも優れた舟ができましたが、期待したほど速度が上がらず、黒潮を越えるには課題が残りました。2017-2018 丸木舟の実験 台湾
3万年前の石器(刃部磨製石斧)で大木を切り倒し、くり抜く実験を行なったところ、この道具で丸木舟が作れることがわかりました。これから海上での機能性をテストしていきます。2019年予定の「本番の実験航海」
私たちが最終的に再現したいのは、沖縄ルートの最初の関門である、台湾→与那国島の航路。この本番の実験航海は、強大な黒潮を越え、遠く水平線の下に隠れる島へ向けて、2~3日間に及ぶタフな航海になるでしょう。3万年前の舟としては、現時点で丸木舟が有力になってきています。帆は縄文・弥生時代ですら使われていた証拠がないので、旧石器時代の舟は漕ぎ舟であったはずです。このように研究と実験を繰り返した後、3万年前としてもっとも妥当なモデルを選んで本番の実験航海に挑みます。それをやり遂げたとき、祖先たちの海への挑戦の実態がわかってくるでしょう。本番への準備
私たちの実験航海では、3万年前の条件になるべく近づくよう、時計・コンパス・GPSなどを持たず、風・うねり・太陽・星などを使って針路を探る航海をします。安全管理のために伴走船が同行しますが、古代舟に針路や位置を教えることはしません。漕ぎ手たちは、不慣れな古代舟を長時間漕ぎ続けるトレーニングに加え、そうした古代航海術を学ぶ必要があります。そのほか、3万年前の実態を探るために、当時の舟を作る道具や、島で人口存続するために必要な移住者数、スーパーコンピューターを使って過去の黒潮を推定する研究など、様々な研究が、多数の協力研究者のもとで進められています。
誰もが参加できるプロジェクト
スリリングな3万年前の謎解き体験を、できるだけ多くの方々と共有できるよう、このプロジェクトは、私たちの試行錯誤や失敗も含めてオープンにしています。実験の資金はクラウドファンディングなどの寄付で頂いていますが、ご支援やご寄付で「会員」になられた方には、最新情報を定期的に配信し、時に直接・間接の交流の場でご意見も頂き、プロジェクトに深く関与して頂いています。皆様ぜひ、私たちと一緒に3万年前の謎を解きましょう!