プロジェクトメンバー紹介

池谷 信之

氏名 池谷 信之(いけや のぶゆき)
所属・役職 明治大学黒耀石研究センター
専門分野 黒曜石原産地推定
旧石器時代における神津島産黒曜石の海上運搬についての研究

自己紹介:プロジェクトでの役割・期待すること

 黒曜石研究のとりこになって既に20年以上が経過しています。その前は縄文土器研究に入れ込んでいました。土器の研究の限界を感じていた頃、黒曜石がヒトの動きを明らかにしてくれる可能性があることに気づいたことが契機になりました。1993年に愛鷹山麓の旧石器時代遺跡から出土した黒曜石を原産地推定したところ、神津島産のものが大量に含まれていることがわかり、それ以降、「旧石器時代の海上渡航」が研究の中心になっています。

 今回のプロジェクトの目的は、台湾-与那国島間の航海を立証することにありますが、神津島産黒曜石を本土側に持ち込んだ航海は、「もう一つの旧石器時代の海上渡航」ともいうべき存在です。当時の舟をどのように目的地に向けて操っていったのか、今回の実験的航海が明らかにすることは、ホモサピエンスが備えていた知的能力を探る手がかりにもなると考えています。

ふだんの研究活動

 黒曜石の原産推定を自らの手で行うため、2003年に蛍光X線分析装置を自費で購入しました。私にとっては、なくてはならない研究上のパートナーで、この装置を使って2万点もの黒曜石製石器を分析してきました。
 神津島産黒曜石は後期旧石器時代初頭(約38,000年前)まで遡ることが明らかとなりましたが、これは人類史上最古の往復航海の証拠であり、国際的にも注目が集まっています。 神津島産黒曜石が、いつ、どれだけ、どのように、運ばれたのかを明らかにし、海外に向けて提示する新たなプロジェクトに取りかかっています。
 黒曜石利用が開始された後期旧石器時代だけではなく、その利用が終焉を迎える弥生時代中期頃まで、黒曜石の受給関係を通時的に明らかにすることが、私の研究テーマであり、様々な時代の研究者と連携しながら分析を続けています。その成果が認められ、考古学関係の重要な賞を幾つか頂くことができました。

受賞歴

H18年尖石縄文文化賞 H22静岡県文化奨励賞 H23日本考古学協会大賞 H24日本文化財科学会奨励論文賞 H26日本旧石器学会賞

著書

黒潮を渡った黒曜石 見高段間遺跡 黒潮を渡った黒曜石 見高段間遺跡」新泉社 2005年
  黒曜石考古学」新泉社 2009年

好きなもの・気になるもの

 趣味はシーカヤックだが、最近ほとんど漕ぐことができていないのが悩み。
 ペットはヘルマンリクガメ1(名前は「コトヤ」、♀17歳くらい)、クサガメ1(名前は「カイ」、♂2歳くらい)、ネコ1(名前は「クウ」、♀5歳)。
 リクガメはオスもいたが、3年前に温浴中に溺死(名前は「カルノ」、戒名は「永寿院豆州枯野居士」、享年14歳)。「カルノ」は応神天皇の御代に、伊豆山中で「枯野」という船を造ったという古事記の記述に、「コトヤ」は、後にその船材を焼いて塩を作り、さらに琴の材料にしたという故事に因んで命名。「カイ」は昨年の晩秋、裏の畑を歩いているところを父親に発見された。どうやら冬眠に失敗したらしく、甲長も5㎝とあまりに小さいので、家の水槽で保護した。
「クウ」はかつての職場で同僚が餌を与えていたメスネコと、近所のボスネコとの間にできたサビトラ。さすがに職場に子猫はまずいので、私が引き取ることにした。家に連れてきた初日から、鳴きもせずぐっすり眠っていたので、「クウ」と名付けた。

最後にひと言

クラウドファンディングにご協力いただいた皆様、ほんとうにありがとうございました。