プランクトンと微化石

渦鞭毛藻

渦鞭毛藻は、非常に多様性の高い生物です。化石種では4000種が記載されています。沿岸域の生態系では、高次消費者の重要な餌となっている基礎生産者であるとともに、異常増殖によって赤潮を引き起こすことも知られています。

微化石として残るものの多くは、渦鞭毛藻のそのままの姿ではありません。渦鞭毛藻には「シスト」と呼ばれる、高等植物の休眠細胞に相当する“種(タネ)”の細胞を形成する時期があります。微化石として多く残るのはこのシストです。シストの微化石は、19世紀から見つかっていますが、分類学上の所属不明とされていました。1960年代になって、生きているシスト(生シスト)の観察や、シストからプランクトンが発芽する培養実験が行われ、シスト期とプランクトン期の形態の関係を結びつけるに至りました。

現在生きている渦鞭毛藻は、2000種ほどが記載されています。その8割の種がシストを形成するとされていますが、シストとプランクトンの対応関係が不明な種は150種以上も残っています。1990年代以降、現生種の分類体系の再構築が進み、いったんは確立されたかと思われたシストとプランクトンの対応も再検討を余儀なくされています。渦鞭毛藻は環境指標としての役割は大きく、将来の赤潮の予測や塩分、水温、富栄養化などの水質環境変化を読み取ることができます。
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同一種でありながら著しく異なった形態を示す原生無殻渦鞭毛藻 Polykrikos kofoidii.
A:遊泳細胞 B:原形質を保持している生シスト
C:発芽後の空シスト。スケールは20µm。
デンマーク・コペンハーゲン近郊に分布する白亜紀フリント中の渦鞭毛藻化石。
A:Spiniferites 矢印は偽横溝や偽縫合線をします。
B:Ceratiopsis
C:Hysterichosphaeridium に同定される。スケールは20µm。
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