プランクトンの世界
海洋や湖沼には、1µm(1/1000 mm)より小さなバクテリアから数十メートルにもなるクジラまで、様々な大きさの生物が生息しています。このWEBページの主役である微化石の多くは、プランクトン(浮遊生物: Plankton)として生活をしていた生物の死骸です。
プランクトンは、「水中を漂うもの」という意味で、遊泳能力が比較的弱く、水中に浮かんでいる生物のことです。一方、水中を自由に泳ぎ回るネクトン(遊泳生物: nekton)は、水中で最も目立つ生物であり、哺乳類や魚類の大半はネクトンです。
プランクトンとネクトンの違いは遊泳能力によりますが、実際のところその区別は曖昧で、オキアミなどの甲殻類はプランクトンとして扱われることも、マイクロネクトンとして扱われることもあります。数ミリメートル以下のサイズになれば、その生物としての運動能力は高くても、海流に逆らって泳ぐなどの絶対的な運動能力は低下しますので、そのほとんどはプランクトンとされます。
プランクトンは、水中の顕微鏡サイズの生物を意味するともされますが、科学用語としてのプランクトンには「小さな」の意味はありません。しかしながら、
小学校の学習指導要領にあった「水中の小さな生物」の単元で、長年にわたって水中の小さな生物=プランクトンとして教えられてきたこともあり、現在では、
「プランクトン」という言葉の慣用的な使い方として「水中の小さな生物」という、本来と異なる意味が『広辞苑』に掲載されるまでになってしまいました。このWEBページでは、プランクトンという用語は浮遊生物という本来の科学的な意味でのみ用いることにします。
プランクトンとネクトンは水中で生活するのに対して、「ベントス(付着生物)」は水底に生息する生物を指します。ベントスにも、タカアシガニのように足を広げると3mを超すような大きなものから、バクテリアサイズのものまで、様々な大きさの生物が含まれます。
プランクトンの採集は、プランクトンネットとよばれる目の細かな網によって行われます。このネットはミューラーガーゼとよばれる、元々は小麦粉の不純物を除くための、網目の大きさが変化しにくい特殊な生地によってつくられています。
プランクトンの研究では、その大きさをつねに意識して採集し研究する必要があります。そのため、プランクトンはサイズによって区別することが多いです。また、プランクトンには生物学的に様々な仲間(ウィルス・菌類・藻類・動物)が含まれます。
プランクトン性藻類とされている物には、原核生物のシアノバクテリア、黄色生物の珪藻、緑色植物の緑藻など、これまた、様々な仲間が含まれており、藻類は実際には光合成を行う独立栄養生物の集合体です。
プランクトンは、性質によっても分けられます。最もよく用いられるのは、プランクトンを植物プランクトン(植物性プランクトンとも呼ぶ)と
動物プランクトンに分ける方法です。植物プランクトンと動物プランクトンは、光合成能力の有無によって分けることができます。
光合成をするプランクトンでも、ボルボックスやミドリムシのように鞭毛で動き回るものがあり、運動性は、動物プランクトンと植物プランクトンを分けるのには、通常用いることができません。植物プランクトンは緑藻やミドリムシ藻(ユーグレナ藻)のように∼藻とよばれ、原生動物プランクトンは放散虫や有孔虫のように∼虫とよばれるものが多いです。
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