プランクトンと微化石

地理的分布

珪藻は単細胞の藻類の一種で、淡水から海水にまで広く生息します。珪藻は、1億年以上前のジュラ紀に出現し、その後現在に至るまで生息し続けています。珪藻化石は示準化石として広く研究され、大きな成果を上げてきました。しかし、示準化石として有効な種の研究が進むばかりで、珪藻化石全体の研究は、いまだ十分ではありません。

こうした研究の不十分な分野の一つが、生物地理に関する研究です。海洋でプランクトン生活をする珪藻は、表層水塊と対応する分布を示します。水塊とは、水温、塩分、溶存酸素濃度、栄養塩類の濃度などの性質がほぼ一定の海水の塊を指します。現在の太平洋では、いくつかの海流が環を描くように流れており、これが表層水塊を分ける主な要因となっています。こうした表層水塊は、第三紀に起こった海陸配置の変化や気候変動に密接にかかわって、成立してきました。海洋でプランクトン生活をする珪藻の分布もまた、第三紀に起こった気候変動に応じて変わってきたと言われています。

海洋のプランクトン珪藻は、これまでに化石種・現生種合わせて2万種以上が記載されており、最も多様な藻類と言われています。珪藻がなぜこうした多様性を獲得できたのかは分かっていませんが、上記のような表層水塊の分化が一つの原因の可能性もあります。海洋循環の変遷と珪藻の古生物地理、多様化との対応関係を見直すことができれば、珪藻の多様性の謎が解けるかもしれません。
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