奇妙な甲殻類


  海にははかなり多くの寄生性の甲殻類が知られており、その種類数はケンミジンコの仲間、カイアシ類だけでも2000種にのぼると言われている。中には寄生生活へ適応して行くうちに、エビやカニの仲間であることをすっかり忘れてしまったのか、その姿形を想像もつかないほどに変えてしまった生物達がいる。ホタテガイにおかしな寄生虫がいることは古くから知られていたが、これがカイアシ類の1種であることがわかり、種名ホタテエラカザリがつけられたのは最近のことである。
 ホタテエラカザリがカイアシ類であることの決め手は、幼生の形である。親の形が変り果てていても、幼生はその本来の形を保っていることはよくあり、親戚関係を探る手段として使われる。それにしてもなぜこれほどに変り果ててしまったのか?現在のところだれも知らない。

ホタテガイに寄生するカイアシ類 ホタテエラカザリ Pectenophilus ornatus 外見は数mmの5葉に別れたただの袋で、足もハサミも触角もない。根元の部分は口でホタテガイの血管と直接つながり、ホタテガイの体とほとんど一体化している。そればかりかその袋状の体は、宿主であるホタテガイが作ったうすい膜ですっぽりと被われている。(撮影:長澤和也)


ホタテエラカザリの外部形態、内部形態、ノープリウス幼生。 我々の目に見えるのは雌で、雄は何と雌の体内にすんでいる。卵は雌の体内で受精し、育児嚢という袋の中で発生、孵化すると、親とは似ても似つかないノープリウス幼生が産出孔から泳ぎ出る。雄は幼生のうちにこの産出孔から雌の体内に入り込むらしい。(提供:長澤和也)

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