いろいろな寄生生物


 寄生生物と一言にいっても、一つのまとまったグループがあるわけではなく、寄生生活を送る生物達を寄せ集めてこう呼んでいるに過ぎない。動物だけでなく植物もあるし、寄生動物にしてもいくつかの異なったグループのメンバー達である。単細胞の原生生物にはたくさんの寄生生物が含まれる。扁形動物はそのほとんどが寄生動物である。一方、袋形動物の線虫類にはたくさんの寄生動物を含むが、また寄生しない自由生活種もたくさんいる。節足動物の甲殻類にも寄生生活を送るものがかなりいることを知っていただろうか。
 寄生生活のしかたには、体表や魚の鰓などにしがみついて暮らす外部寄生と、いろいろな内臓に住み付く内部寄生とがある。一見隠れ家として宿主を利用しているにすぎないものから、幼生期の一時期だけ宿主を訪れ、成長すると宿主を離れてしまうもの、中間宿主に入るもの入らないもの、宿主から一歩も外へでないものまで様々である。この多様性が示すものはいったい何だろう。海に生きる寄生生物について、これまでにいろいろなことがわかってきたが、それらは本当の姿の一部分に過ぎない。

クジラジラミの1種 シアムス Cyamus balaenopterae   クジラの体表にしがみつくクジラジラミは、陸の動物に寄生する昆虫類のシラミとは異なり、甲殻類の中の端脚類に属する。(提供:(財)日本鯨類研究所)
魚の腸管に寄生する吸虫類  動物の腸管は吸虫類、条虫類、線虫類、鉤頭虫類など、各種寄生生物の格好の寄生部位となる。これらの仲間の寄生生物たちを便宜的に寄生蠕虫と呼ぶことがある。吸虫類はふつう2種類の中間宿主を必要とする。この魚は吸虫の幼生を宿した小魚などを食べたのだろう。(撮影:倉持利明)
フクロムシ類の1種 チラコプレトゥス Thylacoplethus edwardsi   フクロムシ類はエビやカニの寄生生物。変わり果ててはいるがこれでも甲殻類、フジツボに近い仲間である。(撮影:野村恵一)

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このページは、 2000/09/09に制作されました。
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