寄生生物と宿主
生物はときどき、自分が都合よく生きて行くために他の生物の力を借りる。他の生物につかまって移動したり、食べ物の残りを拝借したり様々なやり方で他の生物を利用している。これらの多くを片利共生と呼んでいるが、それでは飽きたらずに、栄養とか住み場所、その生物をとりまく外界とのかかわり合いの多くを他の生物に頼る生き方を寄生という。
こういう生き方を選んだ生物たち、寄生生物に対して頼られる側、寄生される生物を宿主と呼ぶ。寄生生物と宿主は穏やかな関係になくてはならない。宿主を痛めつけて殺してしまうと自分も死ぬことになる。彼らは宿主を離れて生きてゆけないのだ。また多くの場合寄生生物と宿主の組み合わせは種によってそれぞれ決まっているので、宿主を間違えても生きて行けない。海の寄生生物のほとんどが人間に寄生しないのはこのためだが、逆に宿主が違うために激しい症状を起こす例もある。
生物が卵からかえり、成長、成熟してまた卵を産む過程を生活史と呼ぶ。寄生生物のなかには、この生活史のなかで宿主を変えながら成長して行くものがいる。その場合、幼生を宿した中継ぎの宿主を中間宿主、成体が寄生する最後の宿主を終宿主と呼ぶ。彼等は喰う者・喰われる者の関係を巧みに利用して生活史を繰り返している。
寄生生物の生活史を示す模式図 図:倉持利明
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