標本に関すること


Database for Aquatic-vertebrate Science

標本の保管方法

執筆:松浦啓一

標本の種類によって様々な保管方法がありますが、肝心なことは長期間たっても標本が損傷しないようにすることです。



標本の配列
標本を管理し、速やかに取り出せるようにするためには、一定の形式で標本を整理して配列する必要があります。配列方法は分類体系順にするのが一般的です。使用する分類体系は最近のものにすると便利ですが、既に別の分類体系に沿って標本を保管している場合には変更する必要はありません。分類体系は分類学の発展によって変わりますが、それにつれて標本の配列体系を変えるのは大変です。さらには標本管理に混乱をもたらしかねません。標本の配列体系は、標本を速やかに探せて、使用した標本を速やかに元に戻せるようになっていればよいのです。




標本の整理をしている松浦室長魚類の標本室。
標本の整理をする松浦室長。魚類の研究室では分類体系に基づき標本を収納している。標本室には窓はなく、室温・湿度は空調により一定に保たれている。蛍光灯の紫外線も標本に悪影響を与えるので、通常は真っ暗にしてある。




標本容器
保存液の蒸発を防ぐために密閉度の高い容器を使います。ガラス製の容器か塩ビ製の容器、ポリ容器などが使われています。ガラスが一番信頼度が高いのですが、大きな標本を入れるガラス容器がないので、ポリ容器も使わざるを得ません。容器は二重蓋(内蓋と外蓋)構造のものを選びます。ポリ容器には蓋が二重構造になっていないものがありますが、その場合にはパッキンがしっかりしているものを選びます。



標本びん(蓋は手前においてある):左から140cc、225cc、450cc、900cc、2000cc
標本びん(蓋は手前においてある):左から140cc、225cc、450cc、900cc、2000cc

大型標本容器:左から20リットル、30リットル、60リットル
大型標本容器:左から20リットル、30リットル、60リットル

大型標本容器:蓋をはずしたところ
大型標本容器:蓋をはずしたところ




標本の敵
良好な状態に標本を保つためにはどんな事に注意したらよいでしょうか。標本の敵はいくつもあります。
  • 紫外線
  • 高温
  • 高湿度
  • カビ
  • ほこり等

液浸標本の場合には湿度やかび、ほこりよりは紫外線や高温に注意を向けた方がよいでしょう。標本室に窓があれば日光を遮断するために暗幕をつける必要があります。また、室内の照明は必要なとき以外は使用せず、室内を暗黒に保つようにすべきです。高温も標本にとって大敵です。標本室に空調がついていれば問題はありませんが、そうでない場合には風通しをよくする必要があります。日本の多くの地方ではそれほど高温になりませんが、真夏の暑いときには標本室を閉め切っておくと40度近くなることもあります。カビやほこりにも注意しなければなりません。液浸標本にもカビが生えることがあります。保存液が不十分になり、標本が保存液から飛び出していると、そこにカビが生えることがあります。また、標本びんの外側にラベルがあると、そこにカビが生えることもあります。標本室の湿度や温度が高くならないように注意する必要があります。

標本の永久的な保管:標本はどこに保管すべきか
標本は学術研究に用いるため永久に保管されなければなりません。保管された標本は図書館の図書と同様に、いつでも速やかに取り出せて、所定の場所に速やかに戻せなければなりません。また、研究目的のために貸し出す体制も必要であす。このようは機能をもつ機関は博物館あるいは博物館相当施設です。自分の研究のために収集した標本を個人的に保存する場合もあるでしょうが、最終的には博物館に標本を保管すべきでしょう。




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