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 人と技術の関係を探って

前島 正裕
 小さい頃からなんとなく古いものが好きでした。自然の物が美しいように、機能を追及した人工物にも美しさを感じます。電気の理論もシンプルできれいです。電気は眼に見えませんが、知れば知るほど目に見えるように感じるところが不思議です。またいろいろな事が自由にできる物が、電気で作れるところに魅力を感じます。
技術の歴史を調べる
技術は人が作り使うものです。 その技術は誰がどのように発明し、それが私たちの社会にどのような影響を与えたのでしょうか。
資料や文献を調査するだけではなく、装置を復元して動作を調べたり、開発に携わっていた方から直接お話を伺うこともあります。
資料の保存
無尽灯

田中久重の無尽灯

過去の証拠品である文献資料とモノ資料は、歴史を紐解く上で欠かせません。証拠品のないところから、歴史は書けないからです。モノ資料は問いかけ方によって、無限の答えを与えてくれます。特に科学技術の歩みや発達過程を考える上で、モノ資料は文献資料からはわからないさまざまな事を示唆してくれます。
電気技術の分野では、あかり、電力、電気通信から情報工学まで、現代を支えるさまざまな技術資料の収集・保存に努めています。日本で初めて音が録音・再生された器械や最初に稼動したコンピュータなど、記録的資料もあります。

FUJIC

日本で最初に稼動したコンピュータ
FUJIC

蘇言機(重要文化財)

日本で最初に音を記録・再生した機械
蘇言機(重要文化財)

マグネトロン

短い波長の電波を出す真空管
マグネトロン

文書の保存
科学技術の資料を収集・保存する上で、研究や開発などに際して書かれたノートやマニュアルを併せて保存することが大事です。そのことによって資料の重要性が増しますし、詳しい技術の詳細を後世に伝えることができます。
電気緒器械

明治時代の引き札 電気緒器械

レーダーのマニュアル類

極超短波開発資料
レーダーのマニュアル類

歴史を聞き取る
開発過程など、関係者に直接お話を語っていただくと、記録に無いことがわかりますし、生身の歴史として次世代へも熱いメッセージが伝わります。MARS-101の開発者穂坂さんやCASIO-14Aの開発者樫尾さんなどのお話は、地球館2階のキヨスク端末でご覧いただけます。
MARS-101

国内初の本格的座席予約システム
MARS-101

CASIO-14A

カシオ創業のリレー式計算機
CASIO-14A

復元する
古い技術を調べたり、その内容を伝えたりするために、古い装置を復元することはとても有効です。近代化遺産展では、アーク灯の実際の眩しさと不安定さを体験いただき、白熱電球の開発が望まれていたことを実感いただきました。
ブラッシュアーク灯

ブラッシュアーク灯を復元し
近代化遺産展で点灯

早稲田式テレビジョン装置

早稲田式テレビジョン装置を復元し
情報展で動態展示

技術発達の歴史を調べる
エジソンダイナモ

日本で最初の事業用
発電所で使用された
発電機 エジソンダイナモ

科学技術の発達は、私達の暮らしを豊かにすると同時に環境問題なども引き起こしています。現代以降の人と科学技術の関係を考えるとき、過去における人と技術の関係や、科学技術の発達過程を振り返ることは有効です。

電気技術はもっとも身近な技術の一つですが、私達の生活を根底から支え、かつ変えてきました。このような変化はどのような道筋をたどってきたのでしょうか。今後の省エネ型社会に向けた行動を考えるうえで、示唆を与えてくれると思います。そのような問題意識に立ち、特に身近な家庭電化の過程も継続して研究しています。

九元連立方程式求解機

アナログ式の計算機械
九元連立方程式求解機

エジソン電球

竹フィラメントの電球 エジソン電球

三相交流発電機

きわめて初期の国産発電機
三相交流発電機

伝える
博物館では、自分の専門以外に資料の収集や展示制作などを通して、様々な歴史的資料、事実や人物に近づく機会があります。これは博物館の仕事の魅力のひとつですが、そのような時に知識以外に情熱や雰囲気のような形にならない印象を受ける時もあります。展示、教育・普及活動やディスカバリートークなどのさまざまな機会を通して、それらもお伝えできればと考えています。
ディスカバリートーク
2001年特別展:「情報世紀」の主役たち。
2003年特別展:「江戸大博覧会−モノづくり日本−」

展示ポスターはこちらから
前島 正裕(まえじま まさひろ)

前島 正裕(まえじま まさひろ)

科学技術史研究グループ

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