おりひめ星があることで有名なこと座の中に、環状星雲(M57)とよばれる星雲があります。望遠鏡で観察してみると、夜空にぽっかりと浮かんだ煙の輪のように見えます。また、みずがめ座のらせん状星雲(NGC7293)も輪のようなかたちに見える星雲の一つです。このような星雲を、惑星状星雲といい、これまでに1000個以上が発見されています。散光星雲や暗黒星雲が不規則な形をしているのに対して、惑星状星雲は円盤状に見えるのが特徴です。ところで、惑星状という名前は、青緑色の円盤状に見えるようすが天王星や海王星に似ていることから、ウィリアム・ハーシェルがつけたのですが、惑星とは何の関係もありませんので、まちがえないようにしてください。
惑星状星雲は、散光星雲や暗黒星雲のような星間雲ではなく、比較的質量の小さい星が、進化の末期に自分の表面のガスを宇宙空間に放出してできたものと考えられています。その証拠に、惑星状星雲の中心には、表面温度が数万度と非常に高温で青白い、白色矮星に近い星が見つかっており、星雲自体も秒速数十kmで膨張していることが観測からわかっています。星雲の直径は1光年ぐらいで、寿命はおよそ数万年と考えられています。
おうし座のかに星雲は、以前は惑星状星雲のなかまに入れられていましたが、このような超新星が爆発してできた星雲(超新星残骸)は、現在では惑星状星雲とは区別して考えられています。超新星残骸の膨張速度は、秒速1000kmから10000kmにも達します。これに比べると、惑星状星雲の膨張はゆっくりで、おだやかにガスが流れ出していることがわかります。
このようにおだやかにガスが流れ出す原因は、いくつかが考えられています。赤色巨星の外側のガスが重力をふりきって逃げだしてしまうというのが、その一つです。赤色巨星は非常に大きく膨張しているので、その表面付近の受ける重力は非常に小さくなっているのです。また、赤色巨星の内部でヘリウム核融合反応が暴走して外側のガスを吹き飛ばすという説もあります。非常に軌道の近い連星(近接連星)が、ガスを交換しながら進化していく過程でガスが流れ出し惑星状星雲ができるとする説もあります。
こと座の環状星雲 M57
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みずがめ座のらせん状星雲 NGC7293
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