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鎌倉で開催された国際海藻採集会
The 9th International Phycological Congress (IPC9)
(2009年8月5日)

参加者
参加者(七里ガ浜高校の前にて)(撮影:小林千穂 氏)

 IPC9 中日の8月5日、ミッドコングレスツアーを鎌倉で開催した。参加者69名。午前8時にオリンピック記念青少年総合センター(NYC)をバス3 台で出発し、午前10時に鎌倉入りして高徳院、長谷寺を見学,正午から神奈川県立七里ガ浜高校で海藻採集と押し葉標本の作製、午後2時から新江ノ島水族館を見学し、午後7時過ぎNYCに無事帰還した。
まず高徳院で、鎌倉観光の基本にして、およそ藻類とは無縁と思われる大仏(銅製)を見学。最高齢P.C. Silva 先生を筆頭に、大仏の内部を拝観された先生も少なくなかった。当日配布したパンフレット「A Guide to Kamakura for Algologists」に寺院の礼拝作法も紹介したので試みた参加者がおられたが、このとき私自身も、七里ガ浜に待機中の現地スタッフから携帯電話に「浜に海藻が一枚もあがっていません」と連絡を受けたため、賽銭箱に5 円玉を投入し、「願はくば海藻を七里ガ浜に打ち上げさせ給へ」と心を込めて祈念した。
次の長谷寺には池を配した美しい庭園があり、くれぐれも藻の採集をしないよう車中でお願いしたが、これは杞憂であったようだ。
七里ガ浜では海岸で昼食を摂りながら西瓜割りを執り行った。濱田仁先生にはこの日本伝統芸についてお手本を示していただいた。西瓜割れず棒折れ弁当尽き始めた頃、ふと見ればいつしか浜に藻の多く打ち上がりたりける。大仏の賽銭が効いたらしい。8月なので種数は多くないものの、ミル、フサイワヅタ、ヘライワヅタ、ヘラヤハズ、アラメ、カジメ、マクサ、ハリガネ、ユカリなど代表的な日本産海藻種が採取された。O.N. Boldina 先生のように「Ocean は生まれてはじめてだから」と遊泳なさった方や、貝を拾いながら稲村ガ崎手前まで散策された先生もおられたようだが、大部分の参加者は海藻を拾って七里ガ浜高校へ持ち帰り、生物実験室で日本流の押し葉標本の製作方法について鎌倉市緑のレンジャー指導員の木村光子氏、杉山順子氏、田中美恵子氏の指導を受けながら、押し葉標本を作製した。参加者が作製した標本は乾燥後に同定し、8月20日にご本人あてに航空便で郵送した。また、実験室には彼女ら3人や同校の生徒が作製した押し葉標本を展示した。想定外だったのはC.A. Maggs 先生が顕微鏡をリクエストされたことで、実習用の顕微鏡で対応した。日本の高校を会場に選んだことは参加者に強い印象を与えたようで、Maggs 先生からは後日メールで,"I agree,it was an excellent mid-congress tour,probably the best I've ever been on."という讃辞を頂戴した。このイベントの実現を可能にした県立七里ガ浜高校 有森斉副校長先生のご英断とご尽力にお礼を申し上げるとともに、同校の高嶋紀子先生、高橋達人先生、中村賢氏(高1)、金沢総合高校の杉山公保先生、NPOひがし作業所の松本能夫氏、鎌倉市緑のレンジャーの石川トキ氏と津田宗治氏のご助力に深く感謝する。
最後の新江ノ島水族館では、入口まもない場所にある水槽展示「海中の森」をみていただいた。これは相模湾にみられるアラメ・カジメ海中林を再現した優れた展示で、本誌(日本藻類学会誌)でも56 巻1 号の「博物館と藻類」に紹介されたものである(崎山 2008)。今回の水族館見学に際して、同館学芸員の足立文先生にさまざまな便宜をはかっていただいた。感謝に堪えない。この水槽を堪能してもらった後を自由行動にしたところ、参加者の多くはやはりイルカショーへ向かったようで、芸達者なイルカが参加者を釘付けにしてくれている間、私はかき氷を食べて一息つくことができた。イルカにも深謝。思えば当日は曇天ながらも猛暑で、現地スタッフや添乗スタッフの額には汗が噴き出していた。機会があればかき氷をおごりたい。
本ツアーはバス3 台を使用したため、2号車と3号車の指揮を寺田竜太先生と阿部剛史先生にお願いした。また、JTBの山内美加氏と柴野寛子氏は実務面でツアーを支え成功に導いていただいた。さらに、代々木から鎌倉まで休み無く英語ガイドをつとめられた水落ゆかり氏、藤井恭子氏、岩瀬はるみ氏、そして写真を撮影していただいた田中学氏と鎌倉朝日新聞の小林千穗氏に感謝するとともに、コングレスツアー元締役の河地正伸先生をはじめとし、ツアーをご支援いただいた関係者すべての方々にお礼申し上げる。

参加者・協力者による寄せ書き

参加者・協力者による寄せ書き

<参加者> 阿部剛史,有賀祐勝,Dong-Ho Baek,John Beardall,Susan I. Blackburn,Olga N. Boldina,Kangsadan Boonprab,Juliet Ann Brodie,David Paul Brodie,Judy E. Broom,Max E. Chacana,Russell L. Chapman,Chi-Chiu Cheang,Anog Chirapart,Min Cho,Thierry Chopin,Wan-Loy Chu,Maeve Edwards,遠藤寛子,濱田仁,幡野恭子,David U. Hernandez-Becer,Catriona L. Hurd,亀井勇統, Jessica U. Kegel,Gwang-Hoon Kim,北山太樹,Nils Kroger,Pauline Laverty,Mary M. Laverty,Hak-Jyung Lee,Jin-Ae Lee,Sirpa Lehtinen,Christine Adair Maggs,Lydiane Mattio,Frederic Mineur,Marina Montresor,Kyoung-Hyoun Moon,Chris Neefus,Wendy A. Nelson,新山優子,二羽恭介,野水美奈,尾張里美,Dioli Ann O. Payo,Marie Pazoutova,Katherina Petrou,Agnieszka Pinowska, Filip Francizxek Pniewski,Aloisie Poulickova,Michael Schagerl,Junbo Shim,Paul C. Silva,Kristian Spilling,Joshua G. Stepanek, Diana Shipley Stepanek,Robin Svensson,田中学,寺田竜太,Kaire Torn,Ainer Torn,Christiane Uhlig,James L. Wee,Beth E. F. Wee,Astrid Werner,Thomas Wichard,Xing-Hong Yan,Nair S. Yokoya,Ji-Won Yu(敬称略,姓のアルファベット順)

(日本藻類学会和文誌「藻類」57(3):147-148(2009)の『北山太樹:IPC9 鎌倉ツアー』より抜粋)

 

採集風景(七里ケ浜)


標本の製作風景(七里ガ浜高校)