オニヤブソテツ類の繁殖戦略と種分化

トップ基本的4型4型の分布形態的特徴生殖システム無融合性複合体のゲノム分析種分化

オニヤブソテツ類の種分化

1.自然雑種の発見

細胞学的に認識された基本的4型の分布や生殖システムの調査結果からオニヤブソテツ類の生態的構造を図示し、矢印でゲノム分析や形態から推定された種分化過程を示します。オニヤブソテツ類の生活史における適応戦略は以下の3つに分けられ、生殖システムと密接な関係があります。

Ⅰ.林床性のA2型とC型の適応戦略:

土壌の栄養が豊富で、安定した環境下ですが弱光に耐え、かつ他殖性のもの。

Ⅱ.林縁性のA1'、A2の一部およびB型の適応戦略:

やや不安定な環境ですが光と土壌の栄養が豊富で競争に強く、かつ他殖性または自殖性(無配生殖は自殖に含められる)のもの。

Ⅲ.海蝕崖裸地のA1型の適応戦略:

競争に弱く腐植質の土壌もほとんど無く、攪乱のある不安定な環境に耐え、かつ自殖性のもの。

性の分化はウイルスなどの感染による病気の蔓延を防ぐために発達したという仮説があります。林床でゆっくり成長する戦略者では性による遺伝子の混合によっ て多様性が高くなる方が病気に対して有利ですが、生育地の攪乱や植生の貧弱なきびしい環境では性を放棄して自殖でスピーディに子孫を残す方が有利となりま す。

このような適応戦略の分化が形態や地理的分布にも反映してオニヤブソテツ類の種分化が起こったものと考えられます。

2.オニヤブソテツ類の分類学的取り扱い

A1、A2およびB型はAゲノムのみを持つのでそれぞれを亜種(subsp.)として、C型はAABBの異質4倍体で外部形態でも区別できるので別種(species)とします。タイプ標本の検討の結果、学名は以下のようになるでしょう。

Cyrtomium falcatum (L. f.) C. Presl

subsp. falcatum オニヤブソテツ:B型

subsp. littorale S. Matsumoto ヒメオニヤブソテツ:A1型

subsp. australe S. Matsumoto ムニンオニヤブソテツ:A2型

C. devexiscapulae (Koidz.) Ching ナガバヤブソテツ:C型

廃刊になりましたが筑波実験植物園研究報告に載せた全文(141ページ)が見られます。 どうぞよろしくお願いします。
詳細については以下を参照下さい↓
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004697664

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