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「分化した隕石」は、岩石質の「無球粒隕石」(achondrite)、鉄とニッケルを主成分とする金属でできた「鉄隕石(隕鉄)」(iron
meteorite)、金属と岩石質の部分が半分ずつある「石鉄隕石」(stony-iron
meteorite)の3種類に大きく分けられます。 ■ 無球粒隕石 無球粒隕石は球粒隕石と同じく岩石質の隕石です。両者を合わせて石質隕石(stony meteorite)と呼びますが、無球粒隕石ではその名の通り、球粒が見られません。無球粒隕石も元は球粒隕石のような物質が集まってできたと考えられていますが、全体がいったん融けたため、球粒の形が見えなくなるとともに、化学組成も分別を受けて変化してしまいました。地球の岩石と同様に融けたマグマからできたため、地球の岩石とほとんど見分けがつかないものもあります。落下してくる割合は隕石全体の8パーセントですが、日本ではまだ確認されていません。 無球粒隕石は化学組成や岩石学的特徴から、さらにいくつかの種類に分類されます。落下する無球粒隕石の70パーセントを占めているのがHEDグループです。これはホワルダイト(howardite)、ユークライト(eucrite)、ダイオジェナイト(diogenite)という3種類の隕石グループの頭文字をとって付けられた名前です。これらの隕石の起源が同じであることが分かり、ひとつのグループにまとめられました。最近、小惑星の反射スペクルの研究により、このグループが小惑星べスタ(直径約500km)から来た、あるいは少なくとも関係があると言われています。 次に多いのがEグループの球粒隕石と関係があると言われているオーブライト(aubrite)や衝突のショックでできたダイヤモンドが見つかっているユレイライト(ureilite)です。この他に、アングライト(angrite)や始原的無球粒隕石(primitive
achondrite)と呼ばれるグループもあります。また、火星から来たと推測されているSNCグループと呼ばれる隕石や、月から来たことが明らかな月隕石も無球粒隕石に含まれます。これらはそれぞれ十数個ずつしか見つかっていないとても珍しい隕石です。この2種類以外の隕石は、球粒隕石等も含めてすべて小惑星帯(火星と木星の間)から来たと考えられています。 石鉄隕石は、金属部分と岩石質部分が半分ずつ混じりあう隕石です。岩石質部分がほぼカンラン石という鉱物だけでできたパラサイト(pallasite)、様々な鉱物が入っているメソシデライト(mesosiderite)の2種類が知られています。石鉄隕石は、金属でできた核とそれを囲む岩石質のマントルとの境目の部分であると考えられています。あるいは、金属の中に比較的重いカンラン石が押し込まれ、核自体がパラサイトのようになっている場合があるとも考えられています。落下してくる割合は隕石全体のわずか1パーセントあまりですが、日本では1898年、高知県にパラサイトである「在所隕石」が落下しました。落下が目撃されたパラサイトは、世界中で4件しかありません。 . . |
■ 鉄隕石 鉄隕石は鉄とニッケルを主成分とする金属の塊です。球粒隕石には多いもので金属が30パーセントほど含まれていますが、球粒隕石が融けると金属は重い(比重が大きい)ため下の方に集まります。こうして大量の金属が集まり固まったものが鉄隕石です。地球の核(コア)も同じようにしてできたと考えられるので、まだ誰も見たことがありませんが、鉄隕石のような物質でできているかもしれません。落下してくる割合は隕石全体の4パーセントと少ないのですが、割れにくく地表の岩石とは全く違うため、昔に落下したものが発見されやすくなります。そのため、知られている隕石全体での割合は高くなっています。日本では8件の鉄隕石が確認されていますが、落下が目撃されたものはそのうち3件だけです。 鉄隕石の表面を磨き、薄い酸で溶かすと、きれいな筋模様の出るものがあります。発見者の名をとって“ウィドマンシュテッテン構造”と呼ばれていますが、これは鉄とニッケルの含有量が違う2つの相が鉄隕石の中に存在し、ニッケルの多い部分が酸に溶けにくいために起こる現象です。この2つの相ができるには、100万年に数度〜数百度という非常にゆっくりした速度で隕石が冷えなくてはなりません。したがって、この模様を人工的に作ることは不可能なのです。 鉄隕石は、この筋模様が見えるか、筋の幅はどれくらいかということで、分類されてきました。全体のニッケルの含有量が6パーセント以下程度だと、相が1つだけになり、模様がでません。この種類をヘキサヘドライト(hexahedrite)と呼びます。ニッケルを6〜20パーセント程度含んでいて模様ができるものを、オクタヘドライト(octahedrite)と呼びます。ニッケルが多くなるにつれて筋の幅が狭くなるので、粗・中・細(coarse, medium, fine)といった言葉をつけて分けています。ニッケルがさらに多くなると、筋が細かくなりすぎて模様が分からなくなります。これをアタキサイト(ataxite)と呼びます。 しかし最近は、ニッケル含有量と微量元素の化学組成から成因が関係する化学的グループに分けることが一般的になりました。微量元素(例えばガリウムやゲルマニウム)の含有量の多い方から少ない方へI〜IVという数字を付け、さらに細かな特徴でA、B、Cなどの記号を付けます。この結果、鉄隕石は、IA、IIDというような十数個程度のグループに分けられています。
↑ エスクエル隕石 (石鉄隕石) ※詳細は画像をクリックしてご覧下さい |
◆隕石についてもっと詳しく知りたい方へ、以下のような書物が出版されています。 『隕石 宇宙からの贈りもの』島正子 著 (東京化学同人/1998年) |