タイプ標本は皮1枚
執筆:松浦啓一
そして、さらに驚いたことに3個体目の標本が手に入ったのです。卒論の学生が八丈島に採集旅行に行ったときに土産物屋でフグ提灯になったものを見つけたのです。
八丈島の土産屋に売られていた提灯フグ。
まさかこのような所にこのような姿で・・・。
彼は私が標本を探していることを知っていたので、フグ提灯を買ってきてくれたのです。残念なことにこのフグがどこで採集されたのかは不明でした。フィリピンらしいということでしたが、詳細は分かりません。フグ提灯になってしまっていて、採集地の詳細が不明であっても、世界に3個体しかない貴重な標本の中の1個体です。この珍しいフグにはナガレモヨウフグという和名をつけ、タイプ標本および石垣島と八丈島の標本を用いて卒論の学生と一緒に再記載論文を発表しました。その後もこのフグの追加標本を手に入れようとしています。国内ばかりではなく、外国の研究者にも頼みました。石垣島の刺し網で採れるのですから、ごく浅いサンゴ礁にいるのだろうと思うのですが、標本はおろか姿を見たという話もありません。海にはまだまだ謎が多いのです。
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