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タイプ標本は皮1枚 執筆:松浦啓一 そこで、ロンドンの博物館の研究者に石垣島の標本の特徴を知らせて、タイプ標本と比較してくれるように頼みました。ところが「Cantorの標本の状態がよくないので、黒色縦線の数を確認できない。皮1枚のタイプ標本は破損しやすいので通常は貸し出さないが、今回は特別に送るので自分で調べてほしい」と言ってきました。幸運でした。
そして、待望のタイプ標本が届いたので、慎重に調べてみました。確かに壊れやすい皮1枚でした。採集されてから150年以上が経過しているので、一見しただけでは色彩もよくわかりません。しかし、強力な透過光を使って顕微鏡の下で観察すると黒色縦線の数と走行パターンを確認できました。さらに幸いなことにタイプ標本の鰭の条数も数えることができました。こうして石垣島の標本はCantorが記載した種と同一であることがわかったのです。残念ながら新種ではなかったものの、実に124年ぶりに採集された標本でした。 |