金星を望遠鏡で見ると、模様がなく一面真っ白に輝いて見えます。私たちが見ているのは、実は金星の表面をおおっている雲なのです。金星は半径質量とも地球とそれほど変わらないにもかかわらず、アメリカやソ連の探査機が明らかにしたその世界はすさまじいものでした。まず表面での大気の圧力は90気圧(地球の90倍)、これは地球の水深約900mでの水圧に相当します。そしてその成分は95〜98%が二酸化炭素でした。
二酸化炭素は、最近地球でも人間の活動の影響で徐々に増加してきていて問題になっています。二酸化炭素は、熱が外の宇宙に逃げ出すのをじゃまする作用を持っていて、その惑星の気候を温暖化させてしまうからです。このはたらきを温室効果といいます。地球の二酸化炭素は現在約0.03%ですが、それでは95%以上も二酸化炭素がある金星はどんなになっているのでしょう? 1970年のベネラ7 号は480°Cという表面温度を観測しています。温室などというなまやさしいものではありませんね。
金星のすさまじさは、温度や圧力だけではありません。それはあの金星をつつみかくしている雲です。あの雲は地球の雲のように水でできているのではなく、なんと濃硫酸でできているのです。このおそろしい濃硫酸の雲が、金星の上空約50〜70kmの間を厚く切れ目なくおおいつくし、金星表面を私たちの目から隠しているのです。また、この雲の中では秒速約100mという地球のジェット気流の3倍もの速さの強い風が吹いていることもわかっています。
紫外線で見た金星の雲
提供:NASA/NSSDC
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ベネラ14号の写した金星表面
提供:NASA/NSSDC
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