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代表的な日本固有種、国内の多様性ホットスポットに生息する種、日本を分布の中心とする種など、「多様性ホットスポット日本」の重要な構成要素と考えられる生物を、プロジェクトに参加している様々な分類群が専門の研究者たちが紹介します。
トガサワラマツ科Pseudotsuga japonica (Shiras.) Beissner植物界-維管束植物門-マツ綱-マツ目 |
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1, 2, トガサワラ自生地(1: 高知県安芸市古井西ノ川保護林; 2: 高知県馬路村魚梁瀬保護林(矢印がトガサワラ)); 3, 枝、西ノ川; 4, 球果(現生), 奈良県川上村; 5, 球果(化石), 福島県福島市北谷地(更新世前期), 福島県立博物館所蔵 |
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トガサワラは高知県東部の魚梁瀬地方と紀伊半島中央部(奈良県川上村および三重県熊野市)の標高400-1000 m付近に分布するマツ科の常緑針葉樹だ。枝の左右に線形の葉をつける点は同じマツ科のツガに似るが、葉はより長く、葉柄の基部がモミのように吸盤状になる。大ぶりの球果には先端が3裂した苞鱗片が飛び出し反り返る特徴があるため、区別は容易だ。トガサワラはツガやコウヤマキといった針葉樹とともに尾根や急峻な斜面に優占林を作る。土壌がより厚く発達する場所には決まって常緑広葉樹が優占することからみると、他の種類が好まない過酷な場所に追いやられて生きているかのようだ。トガサワラを含むトガサワラ属は東アジアと北米に4〜8種程度が隔離分布する。化石記録は多くないものの、新生代中頃の漸新世(約3千万年前)以降、北半球各地から化石が見つかるため、現生種の分布が遺存的なものであることがよくわかる。日本でも第四紀初期には東北地方でも化石が見つかるため、現在のような分布が地質学的には極めて最近になって形成されたことが推測できる。(地学研究部・矢部 淳) |
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分布 | 日本固有種(高知県魚梁瀬(やなせ)地方、奈良県川上村三之公川周辺、三重県熊野市大又国有林) | |||
絶滅危惧(環境省) | 絶滅危惧II類(VU) | 絶滅危惧(IUCN) | Endangered C2a(i) |