ある地域に生育分布する植物のまとまりを植物相といい、その植物相の相違により分けられた地域を植物区系といいます。琉球列島は植物相によって、北琉球(大隈諸島・トカラ列島一部)、中琉球(トカラ列島一部・奄美諸島・沖縄諸島)、南琉球(宮古諸島・八重山諸島)、大東諸島、尖閣諸島の5つの地域に区別されます。北琉球と中琉球の間は温帯と亜熱帯の境界でもあり、地球レベルでの植物区系の境界線でもあります(日華植物区と東南アジア区系)。
- 北琉球
- 大隅諸島とトカラ列島の7つの島からなります。大隅諸島には温帯系植物が多くみられ、九州以北の日本列島と植物相が似ています。北琉球と中琉球の境界はトカラ列島にある深い海峡(トカラ海峡)で区切られています。その境界線は生物地理学的には渡瀬線と呼ばれ、温帯と亜熱帯の境界になっています。
- 中琉球
- トカラ列島の2つの島、奄美諸島、沖縄諸島からなります。かつて1つの島だった奄美諸島と沖縄諸島は日本列島形成の初期に他地域から隔離され、古代の自然が残る地域ともいわれています。奄美大島の湯湾岳付近と沖縄島の北部(通称やんばる)はシイ林が発達し、固有種など貴重な生物が分布しています。
- 南琉球
- 宮古諸島と八重山諸島からなります。最後まで台湾と陸続きであった八重山諸島は台湾との共通種が多くみられます。宮古諸島はほとんどが琉球石灰岩からなる平らな島で、海岸近くなどには多くの熱帯性植物種が分布しています。南琉球を南限とする熱帯植物が多くみられることも特徴の1つです。
- 大東諸島
- これまで一度も大陸と陸続きになったことのない島(海洋島)です。約4800万年前、ニューギニア付近で誕生し、水没を繰り返しながら現在の位置に移動しました。大東諸島は隆起環礁からつくられ、周りが盛り上がり、内部がくぼんだ地形をしています。渡り鳥や海流によって運ばれ、独自に分化した固有植物が多く分布します。
- 尖閣諸島
- 大陸棚の上にある島々からなります。数万年前まで大陸と陸続きであつたため、中国と共通。関連する生物が多く分布するほか、島嶼隔離で独自の分化を遂げた固有生物も分布します。現在、かつて家畜として人為的に持ち込まれたヤギが野生化し、自生植物に深刻な影響を与えています。