フラボノイドコレクション

熊本大学から寄贈されたコレクション(KM)のデータを追加しました(2024年4月 更新)
今後も内容を更新し、充実させていきます。

はじめに

「フラボノイド」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?ブルーベリーのアントシアニンやソバのルチン、お茶のカテキンに大豆のイソフラボン、実は、これらは全てフラボノイドに含まれます。身近に感じて頂けましたか?そもそもフラボノイドとは、種子植物からシダ、コケ植物まで幅広く見られる化合物です。これまでに、10,000種類以上が報告されるとともに、現在でも新しい構造を持つフラボノイドが報告されています。

フラボノイドコレクションとは?

国立科学博物館植物研究部では、日本に自生する希少な植物から海外の植物まで、さまざまな種を対象にフラボノイドの研究を進めてきました。また、これらのフラボノイドを粉末化あるいは結晶化し、大切な資料として保管してきました。保管しているコレクションは主に当館の岩科司名誉研究員(1952~)と、その師にあたる、林孝三教授(1909~1995)などの研究によって得られたものです(図1)。

本ホームページでは、当館が所有するフラボノイドのコレクションについて、化学データとともにデーターベース化し、公開していきます。これにより、植物から取り出された天然物標品の学術的価値の向上と、さらなるフラボノイド研究の発展に貢献したいと考えています。

当館に収蔵されているフラボノイド標品

[図1.当館に収蔵されているフラボノイド標品]

フラボノイドはなぜ多様?

フラボノイドは植物の根、茎、葉、花、種子など、様々な器官に含まれる二次代謝産物の一種です。二次代謝産物とは、生命活動の維持に必ずしも必要ではない物質として認識されがちですが、動くことのできない植物では、その植物の生えている環境で生き抜くため、様々な方法でフラボノイドを活用してきました。

例えば、次世代を残すために必要な花を目立たせるため、色素として利用する植物や、紫外線や乾燥、低温などの環境ストレスに適応するために合成する植物などです。このように、フラボノイドは様々な目的によって、様々な構造を持つようになり、気付けば、10,000種類以上という大きな化合物群になったと考えられます。

植物は様々な環境で生き抜くため、様々な方法でフラボノイドを活用している

[図2.植物は様々な環境で生き抜くため、様々な方法でフラボノイドを活用している]

フラボノイドとはどんな化合物?

フラボノイドは化学的には、2個のベンゼン環(A環とB環)が炭素原子3つで結合したC6-C3-C6の基本構造を持つものの総称です(図3)。A環は3分子のマロニルCoAに由来し、B環とC3の部分はフェニルアラニンに由来しています。フラボノイドは生体内では糖と結合した配糖体として液胞内に存在することが一般的です。

結合する糖は、グルコースやガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸などの単糖から、二糖類や三糖類が結合するものまであります。また、芳香族有機酸や脂肪族有機酸などが結合したフラボノイドや、ポリメトキシル化することで細胞外に存在するフラボノイドまであります。

フラボノイドの基本構造

[図3.フラボノイドの基本構造]

フラボノイドの多様性を知る

フラボノイドの研究分野は、遺伝子解析を含めた生合成研究から、生理活性や薬理作用に関する研究、さらには園芸学分野での実用的な研究まで、幅広い分野で発展を遂げています。このように多様な研究が可能となった背景には、土台となる基礎的な知見が集積しているからに他なりません。当館では多様なフラボノイド研究の基礎を支えるための植物における分布の調査を精力的に進めています。