”ホトトギス”と聞けば小鳥を思い浮かべる人が多いことでしょうが、植物にもホトトギスと呼ばれる野草がある。この名前は花びらにある紫色の斑紋がホトトギス(小鳥)の胸の斑紋と似ていることから付けられたとされている.ホトトギス(小鳥)のは横縞模様であるが、野草の斑紋には横縞模様から大小の斑点まで様々なものがある。

 ホトトギス属植物は19種知られており、いずれも東アジアに生育している。日本には12種分布しているが、この内の10種は日本だけに生育する日本固有種である。この分布の様子から、日本はホトトギス属の分化の中心地と云える。

 ホトトギス属は大きく4つのグループ(節)に分けられる。

 第1のグループは黄色の釣り鐘型の花冠を持つジョウロウホトトギス節で、ジョウロウホトトギス、キイジョウロウホトトギス及びサガミジョウロウホトトギスの3種からなり、第2のグループは黄色で、上向きに咲く花を着け、茎に開出毛の出るキバナノホトトギス節で、キバナノホトトギス、チャボホトトギス、タカクマホトトギス及びキバナノツキヌキホトトギスの4種からなる.これらの2グループ(節)は日本固有種のみからなる。

 第3のグループは白色で、上向きに咲く花を着け、茎に斜上する毛の出るホトトギス節で5種からなるが、日本にはホトトギスとタイワンホトトギスの2種しか見られない。第4のグループは白又は黄色の花を上向きに咲かせ、茎に斜め下向きの毛の出るヤマホトトギス節で7種からなり、日本にはヤマホトトギス、ヤマジノホトトギス、セトウチホトトギス及びタマガワホトトギスの4種が分布している。


日本産ホトトギス

ヤマジノホトトギス Tricyrtis affinis Makino
キバナノホトトギス Tricyrtis flava Maxim.
ホトトギス Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook.
シロホトトギス f. albescens (Makino) Hiyama
サツマホトトギス var. masamunei (Makino) Masamune
イワホトトギス var. saxicola Honda
サガミジョウロウホトトギス Tricyrtis ishiiana (Kitagawa & T. Koyama) Ohwi & Okuyama
スルガジョウロウホトトギス var. surugensis Yamazaki
タマガワホトトギス Tricyrtis latifolia Maxim.
ジョウロウホトトギス Tricyrtis macrantha Maxim.
キイジョウロウホトトギス Tricyrtis macranthopsis Masamune
ヤマホトトギス Tricyrtis macropoda Miq.
チャボホトトギス Tricyrits nana Yatabe
タカクマホトトギス Tricyrtis ohsumiensis
キバナノツキヌキホトトギス Tricyrtis perfoliata Masamune
セトウチホトトギス Tricyrtis setouchiensis Hr. Takahashi

■標本情報


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