潮だまりでも、浅海でも、深海でも、海底では死んだ魚をほとんど見ることができない。不思議なほどである。海底で生活している無脊椎動物たちは生きている相手を攻撃して食べる獰猛な種類よりも、プランクトンを集めたり、海藻を食べたり、あるいは死んだ魚などを食べるという、むしろ穏やかな食性をもっているということなのであろう。移動できるカニ類やヤドカリ類、貝類は、いつもえさを探しあるいている。魚だけではなく、死んだ動物ならば何でも食べる。いうなれば、海底を掃除している。これらの動物は一刻も早く獲物にたどりつくために、鋭い嗅覚を備えている。それぞれ独特な方法で獲物をありかを知って集まり、巧みな方法で獲物を料理し、口に入れる。まさに、海の底は食物の宝庫! 貝類とカニ類を例として、死んだ動物たちがどのように処理されるのかを見てみよう。
写真:はさみを器用に使ってえさをむしりとるイソガニ(撮影:楚山 勇)