2025-01-23
マイクロCTが解き明かす昆虫と昆虫がつくるものの3次元的構造
マイクロCTで見るギナンドロモルフのカブトムシ
図3 ギナンドロモルフのカブトムシの内部構造
マイクロCTによって観察した甲虫の中で、興味深い発見があったものの一つが、「ギナンドロモルフ」のカブトムシです。ギナンドロモルフ(雌雄型、または性的モザイク)は、1個体の中にオスとメスの両方の特徴が見られる現象です。今回観察したカブトムシは、頭部には角がなく、胸部には角があるという特徴をもっていました。カブトムシは通常、オスにのみ頭部と胸部に角が1本ずつあることから、少なくとも外見上、頭部はメス、胸部はオスの特徴をもっているギナンドロモルフであることが明らかでした。
ギナンドロモルフは、昆虫や節足動物などでごくまれに見つかり、標本などが保存されています。ところが、そのような昆虫標本は乾燥標本として保存されることが多く、内部の組織は乾燥によって壊れているため、後から元の構造を知ることは困難です。
一方、今回観察したギナンドロモルフのカブトムシは、幸運にも生きた状態で入手されたものでした。そのため、マイクロCTを用いて、内部の組織をほぼ完全な状態で撮影し、初めて記録に留めることができました。観察の結果、大あごの一部を除く頭部の大部分はメスの特徴であったものの、その頭部を動かす筋肉は通常のオスと同様であるという興味深い特徴も捉えられました。
関連論文:
野村周平・井手竜也. 2024. カブトムシ(コウチュウ目,コガネムシ科)ギナンドロモルフ個体のマイクロCTおよび走査型電子顕微鏡(SEM)による形態学的観察. 昆蟲(ニューシリーズ), 27: 143-152.