星に限らず、物までの距離を測るもっとも基本的な方法は、三角測量です。2カ所から見て、見える方向が大きくちがうのなら近く、あまり変わらなければ遠くということがわかります。2カ所の間の距離や見える角度の違いがわかれば、正確な距離を計算することができます。月までの距離は、地球上の2点で見える位置を測定することによって、求めることができます。
星までの距離は、月などの距離に比べると非常に遠いために、地球上の2カ所から観測しても見える角度の違い(視差)があまりに小さく、とても測ることができません。そこで天文学者は、地球上の2つの地点から比べるのではなく、半年おいた2回の観測を比べることを思いつきました。地球は太陽の回りを公転しています。半年おいて2回観測すれば、太陽をはさんだ両側から星を観測したことになります。2点の間の距離が大きくなれば、視差がそれだけ大きくなり、観測しやすくなるわけです。このようにして求められた視差を年周視差といいます。
観測しやすくなったといっても、年周視差の大きさはそれでも非常に小さく、初めて測定されたのは、1838年のことでした。求めたのはドイツの天文学者ベッセル、星ははくちょう座61番星、年周視差は0".314(1"は1°の1/3600)でした。この角度を距離に換算すると、10.4光年になります。宇宙の大きさを求める研究は、ここから始まったのです。ちなみにもっとも近い星は、ケンタウルス座アルファ星で、4.3光年の距離にあります。
年周視差の方法では、遠くの星の距離は求めることができません。そこで、次に星流視差や分光視差などの方法が用いられます。星流視差は、宇宙空間を同じ方向に運動している星の集まり(運動星団)の運動のようすから、その距離を調べる方法です。おうし座のヒアデス星団の距離は、この方法から約150光年とわかっています。星団は、属している星がほとんど同じ距離にあるために、星のさまざまな性質を比較研究するのに非常に便利です。このような研究によって、星の色やスペクトルのようすから、その星のもともとの明るさ(絶対等級)などもわかるようになりました。もともとの明るさがわかれば、見かけの明るさと比べて、その星までの距離を求めることができます。これが分光視差の方法です。
2カ所からの見え方の違いで距離を測る
ヒヤデス星団の星の運動
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