宇宙を飛びまわる宇宙船に乗り組んで、大宇宙の中を探検する。もし、そんなことができたらどんなにすばらしいことでしょう。では、こういう宇宙船からみると、宇宙のすがたはどのように見えるのでしょうか。この宇宙船の前につきだしている、宇宙展望台からながめてみることにしましょう。
宇宙船の速さが光の速さに比べて十分おそいときは、私たちが地球上からみる景色とそれほど変わりがありません。全天に広がる暗い宇宙の中に星が輝き、そのほかの天体も観測されます。たとえば、私たちの地球も太陽のまわりを秒速30kmの速さでまわっている宇宙船と考えてもいいのです。では宇宙船のスピードを上げて、しだいに光の速さに近づいていってみましょう。おやおや、ちょっと、宇宙の星のみえかたが変わっていくようです。さきほど宇宙船の娯楽室でみたSF映画では、光速に近い速さの宇宙船から外を見ると、星がものすごい速さで後ろに飛びさっているようになっていました。でも、本当はこのSF映画とはぜんぜんちかっているようです。
全天にちらばっている星は、だんだんと前の方によってきて、宇宙船のスピードが速くなればなるほど、前方に集中していきます。はじめに宇宙船の横や後ろの方向に見えた星まで、前の方に見えるようになってきました。これは、じつは光行差という現象なのです。雨が降っているとき、車や電車などに乗っていると、窓に落ちる雨は斜め前の方向から降ってくるように見えるでしょう。これと同じように、ま横からくる光も光の速さに近いスピードで運動していると、斜め前からくるように見えます。そのため、星からの光もみんな前の方からくるように見えるのです。
光の速さに近いスピードだったとしたら、宇宙船の後方からくる光も、前方から来ているようにみえます。光速の90%の速さの宇宙船からは、天の前半分が前方の直径約50度の範囲に集中して見えます。ですから、宇宙船の進行方向にたくさんの星が集中し、後方には数少ない星がまばらにちらばってみえます。限りなく光速に近い速さで飛んでいれば、宇宙船のま後ろの星をのぞいたすべての星が、宇宙船のまん前の一点に集中して見えます。
また、星の色もちがって見えてきます。前にドップラー効果についてお話しましたが、この効果によって前方の星の光は波長が短くなり、青く見えるようになります。また後方からの星の光は、波長が長くなり赤く見えるようになります。宇宙船が光の速さに近づくと、前方の星の光はどんどん青くなり、ついには紫外線でだけ光るようになって、目では見えなくなります。また、後方の星の光はどんどん赤くなり、ついには赤外線でだけ見えるようになり、これも私たちの目では見えなくなってしまうのです。そして、宇宙船の前方横の所に、前が青く、後ろが赤い、星がはばせまく集まった帯のようなものが見えてきます。これを、星の虹、スターボウ、とよんでいます。
光の速さに近いスピードで飛んでいる宇宙船から見た宇宙は、意外にさびしいものだったのですね。
光行差とドップラー効果
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宇宙船から見た宇宙
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