宇宙を舞台の大冒険SF映画では、宇宙船が超光速で飛んでいくこともあります。しかし、物体のスピードは光の速さ以上にはなれません。そこでSF映画などでは、ワープという手段で一瞬のうちに宇宙の遠く離れたところに宇宙船が移動できることになっています。これを一般にスペースワープとか、単純にワープとかよんでいるのです。そうすると、一瞬のうちに遠い距離を移動するのですから、超光速とよんでもよいのでしょう。でも、このワープってなんのことでしょう。また、本当にこれで超光速になれるのでしょうか。
ワープとは英語で、ゆがみとかよじれ、という意味の言葉です。相対性理論では、大きな質量があるとき、時空がゆがんでいると考えます。たとえば、ブラックホールのところでは、時空が深い井戸のようになっていると考えました。また、相対性理論では時間を反転して考えたブラックホールというものが存在できます。これは深い井戸から物質が光の速度で飛び出してくるもので、ホワイトホールとよばれます。ブラックホールは物質を吸いこみ、ホワイトホールは吐き出すわけです。また、これらがペアを作ってつながっていると、時空にあいた虫食いあなのようになるので、これをワームホールとよびます。
ブラックホールの中に入った宇宙船が、ワームホールを通って非常に遠いホワイトホールから出てこれたとしたら。一瞬のうちに大きな距離を動くことができるかも知れない、と考えている人もいます。これは、少しは科学的な考え方ですが、これもワープとよばれます。
また、宇宙の時空をちょうどじゅうたんにしわをよせるように、引き集めて、そのしわをひょいと飛び越し、しわをのばしてやると、短い時間のうちに遠いところに移動できるかもしれない、と想像している人もいます。中には、まったく科学的な根拠もなく、宇宙船が超光速で飛んでいくSF映画もあるようです。これらのことをひっくるめて、超光速ワープとよばれているわけです。
では、こういう超光速ワープは本当にできるのかというと、残念ながらそういうことは考えられません。ブラックホールのところで時空がゆがんでいるのは事実ですが、宇宙船を無傷でブラックホールに突入させることは、とうていできそうもありません。もしその中に入ったとしても、そのさきが本当にワームホールになっているかどうかもわかりません。ホワイトホールはまだ観測されていませんし、本当にあるのかどうかについて大きな疑問がもたれています。もし無事にでてこれたとしても、宇宙のどこに行くかは運まかせです。そのほかの宇宙の時空にしわをよせる、とか単純な超光速については、「そんなことはできません」と答えるしかありません。いまは、超光速ワープはできない、とお答えするのが本当でしょう。
ワームホール
宇宙にしわを寄せる
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