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群内分析では、四肢骨の長さ・太さがともに頭蓋最大長と強く関連
2014年4月5日更新
私(Mizoguchi, 1994-2008)は、最終的には、我々の形態の全ての部位の形成要因と形成過程を明らかにすることを夢見て、しかし、実際には自分の人生の中では不可能であろうと思いつつ、一部の形態学的形質に的を絞って、分析を行なってきました。その最初に選んだ対象が脳頭蓋の形なのですが、20年以上経った今もまだ分析し終えていません。しかし、その中で確認した事実の1つは、体幹・体肢骨計測値が脳頭蓋3主径(頭蓋最大長、頭蓋最大幅、バジオン・ブレグマ高)と関係を持つとしたら、群内の分析であれば、それは常に頭蓋最大長であって、最大幅ではない、ということです。このことを大雑把に示したのが、タイトル直下にある図です。この図で青い部分は男女ともに同じ傾向があることを示します(ピンクの部分は女性のデータでしか、確認していません)。
ただ、これまで私が行なってきた一連の群内分析では脳頭蓋3主径と体幹・体肢骨計測値の間の関係に的を絞っていましたため、他の研究者が示唆している、例えば、鼻の長さ・幅と体の大きさとの関係などについては確認してきませんでした。そこで、群間変異を対象とする本研究計画を実施するに先だって、私がこれまで分析してきた現代日本人標本についても、そのような点がどうなっているのかを確認すべく、以下のような分析を行ないました。詳細はMizoguchi (2013)をご覧下さい。
まず、脳頭蓋の形態変異の原因候補と関係のありそうな計測項目を選び出して、脳頭蓋3主径との相互関係を調査することにしました。脳頭蓋形態変異の原因となりそうな仮想的要因とそれに関係がありそうな計測項目として、以下のようなものを考えました。
次に、以上の計測項目と脳頭蓋3主径の双方に有意な相関を持つ因子を主成分分析法、ヴァリマックス回転法などを使って探索し、さらに、男女の標本における再現性を因子負荷量の変異パターンの比較によって確認しました。
結果として、頭蓋最大長の短縮傾向が(頭蓋最大幅の拡大傾向も)、脳容量や身長とは無関係に、鼻高(酸素摂取量)増大や、大腿骨中央矢状径(骨格筋量)増大、大腿骨頭垂直径(体重)増大、距骨長(体重)増大の傾向と並行関係にあることが明らかになりました(図1、図2、図3)。以上は、寒冷地適応に関係しているとされる形質の群間での相互関連と矛盾しません。
図1.骨格筋量と関係のありそうな計測値についての主成分分析の結果(因子負荷量)
図2.体高と関係のありそうな計測値についての主成分分析/バリマックス回転の結果(因子負荷量)
図3.体重と関係のありそうな計測値についての主成分分析の結果(因子負荷量)
他にも注目すべき関係があるかもしれませんが、それら群内分析での結果が群間分析の結果とどう対応するのか。今後さらに、形態学的形質と環境要因の間の直接的な群内・群間分析の結果も考慮して、検討する必要があると考えられます。
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